中里介山 『大菩薩峠』 「面目ないことじゃ、実は少々酔いが廻ったも…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』

現代語化

「すいません、ちょっと酔っ払ってて、水を汲もうとしたらこうなってしまって――ところで、なんでここに?」
「人を探してて、この辺まで来たんですけど、見失っちゃって……」
「それはそれは、とりあえず中へ」
「あれ?これどうしたの?ここに男の人が縛られて倒れてるけど」
「あ、それは狂い者だよ。治療のために水をかけてるんだ」
「狂い者だって、この寒さで井戸端に置きっぱなしにするなんて凍え死んじゃうよ」
「あなたたちが探してる人って、どんな人ですか?」
「最近町で噂の辻斬りです」
「なるほど」
「夜から朝方にかけて変装して探してるんだけど、全然見つからない。でも今夜、柳小路で怪しい奴を見かけて、こっそり尾行したら要法寺の墓地に入って行方をくらませた。逃げようとした時に、仲間が古城の方に行ったって言ってたから、二人で追いかけて見たら、確かにこの屋敷の裏で見た奴だった。うれしくて駆け寄ってみたら、探してた辻斬りじゃなくて、ご主人の神尾殿がこのありさまでした」
「それは、それは」

原文 (会話文抽出)

「面目ないことじゃ、実は少々酔いが廻ったものだから、酔醒めの水を飲もうと、水を汲みかけてこの状じゃ――して貴殿方はどうしてここへ」
「我々はちと尋ねる人があって、その人を尋ねてこのあたりまで来たところ、ついその人を見失うて……」
「それはそれは、ともかく、あれまで」
「こりゃどうしたんだ、エ、ここに男が一人縛られて倒れてるが、こりゃどうしたんだ」
「ああ、そりゃあきちがいじゃ、養生のためにそうして水を浴びせてやるのじゃ」
「いくらきちがいだってお前、この寒いのに井戸側へ、水をかけて置きっ放しにしたんじゃ凍え死んでしまうじゃねえか」
「貴殿方が尋ぬる人というのは、そりゃ、いかなる人でござるな」
「ほかではござらぬ、このごろ市中に評判のある辻斬の曲者を尋ねんがために」
「なるほど」
「夜更から暁方へかけて、こうして扮装を変えて毎夜のように尋ねてみるが、ついぞ出会し申さぬ。しかるに今夜という今夜、柳小路で見かけた怪しの者、見えがくれに後をつけると、要法寺の墓地へ入って行衛が知れず、引返そうとした時に、かねて謀し合せておいたこの男、同じような怪しい者が、たった今、古城の方へ行ったと申す故、二人で後追いかけて、たしかに姿を認めたのが当屋敷の裏手。喜び勇んで駈けつけて見れば、それは尋ねる曲者ではなくて、御主人の神尾殿がこの体たらく」
「それは、それは」


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