中里介山 『大菩薩峠』 「よく、お寝っておいであそばしました」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』

現代語化

「よう、寝てたんだな」
「あ、うとうとしちゃった」
「お客さんだよ」
「客?」
「言っといたじゃん。この仕事始めてからはお客さん会いたくないって」
「強がって会いたがってるみたいよ。そのお客さんからの頼みだって」
「誰なんだ?」
「女の人らしいよ」
「女の……」
「はい。神尾主膳様の親戚らしい」
「ふーん」
「何の用事か知らんけど、俺は会いたくないから、誰かに会ってもらって」
「でもご本人が直接お会いしないと用件が言えないらしい。小島さんとか服部さんも、俺に頼んでたよ」
「面倒だなあ」
「ともかく、とりあえず通してちょっと待ってもらっといて」
「わかった」
「あとさ、俺の羽織だけ持ってきて」
「了解」
「あ、そうだ。神尾が嫁さん欲しがってる件で、奥さんが来たのかな。信長様からも話あったんだけど、俺、まだよくわかんないから返事してない。神尾が本気なのか策略なのか、ちょっと確かめてからじゃないと……」
「でも神尾って小物じゃん。俺が断ったら絶対恨むだろうけど、何も知らない女の人が騙されたら気の毒だよね」

原文 (会話文抽出)

「よく、お寝っておいであそばしました」
「あ、ついうとうとと寝入ってしまった」
「あの、お客様でございますが」
「客?」
「言うておいた通り、この仕事をはじめてからは、来客に会いたくない」
「強ってお目通りを致したいと、そのお客様からのお願いでございます」
「それは誰じゃ」
「女の方でございます」
「女の……」
「はい、神尾主膳様の御別家のお方と申すことでございまする」
「ははあ」
「どのような用向か知らん、わしは会いたくない、誰か会ってもらいたい」
「それでも殿様に、直にお目通りを致さねば申し上げられないことなのだそうでございます。それがため、小島様も服部様も、わたしにお殿様へお取次ぎ申してみるように、お頼みでございました」
「はてな」
「ともかく、あちらへお通し申しておくがよい、暫らくの間お待ち下さるようにお断わりをして」
「畏まりました」
「それから、お前は、わしの羽織だけをここへ持って来てくれるように」
「畏まりました」
「ははあ、そうじゃ、忘れていたわい、例の神尾が嫁を貰いたいということであろう、あの一件で例の婦人が出向いて来たものと見ゆるわい――筑前殿からも内談があったのだが、あれは、まだ拙者には解せぬことがある故に、なんとも返事をせずにおいた。事実、神尾があの縁組みを本気でするか、それとも一時の策略か、その辺を、もう少し確めてみぬことには……」
「しかし神尾は小人じゃ、まんいち拙者が故障を言えば、きっと拙者を恨むに違いない、恨まれるのは苦しくないが、何も知らぬ処女が、悪い計略に落ちるようじゃと気の毒の至り」


青空文庫現代語化 Home リスト