中里介山 『大菩薩峠』 「この野郎ども、飛んでもねえことをしやがる…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』

現代語化

「この野郎共はひどいことをしおる」
「やあ、ご苦労さん!」
「お嬢様、もう大丈夫ですよ、本当にあいつらは悪い奴で、お嬢様とも知らずにひどいことをしおる」
「市五郎さん、あんたが来てくれなければ、私はどうなることやら。よかったあなたに来てくれて、そしたら悪い奴らがみんな逃げたんですもの」
「そんな、たかが知れた小悪党ですよ、放っておくと癖になるから、ちょっとこらしめてやりました。ご心配なさらないでください、これからお屋敷まで送りますから」
「市五郎さん、私には連れがいて、それを待っていたんです、その連れに知らせてもらえませんか」
「そうですか、その連れの方はおどこにいらっしゃるんですか」
「お城まで行きました、もう帰ってきて、あの濠の辺りで私を探してると思います、早くそこへ人をやって、私がここにいるって伝えてください」
「はい、わかりました。その連れの方のお名前は何ですか」
「君っていうんです、年も同じくらいで、私と同じような着物を着てます」
「なるほど、お君さんですね、はい、今、人をやって呼びに行きますから、ご安心ください」
「この甲府にも、私の親戚はいますが、誰にも言わないでください、私が悪い奴に会って、あんなひどい目に遭ったって、世間で知られると恥ずかしいんで、内緒にしてください」
「はい、そういうことは心得ています、人の外聞になるようなことは、頼まれても言いませんよ、ご心配なく。まあ、とにかく無事だったのが何よりでした」
「あ、早く連れに知らせを頼みます」
「はい、はい。今、使いに出した奴がもうすぐ帰ってきますから、帰ってきたらすぐ行かせます。お乗り物とかは、ここで一声呼べば来ます。女中がいれば髪やお着物の世話もできるんですが、まあそのうち女中も帰ってくるでしょう」
「髪や着物は気にしないで、お君が帰ってくるだけで、すぐに屋敷に帰ります、早くお君に知らせを」
「へえ、困ったな、いつも2、3人うろうろしてるのに、今日に限って女中まで出て行ってしまうとは……俺が行けば家は空になるし……野郎どもも察しが良いはずだ、ぐずぐずしてると日が暮れちまうじゃねえか、日が暮れたら、お嬢様をここに泊めなきゃならなくなるんだ。そんなことになったら、お屋敷でどれだけ心配されるかわからない」

原文 (会話文抽出)

「この野郎ども、飛んでもねえことをしやがる」
「やあ、役割!」
「お嬢様、もう御安心なさいまし、ほんとにあいつらあ、悪い奴だ、お嬢様とも知らずに碌でもねえことをしやがる」
「市五郎どのとやら、お前が来てくれなければ、わたしはドノような目に会ったことやら。よいところへお前が来てくれたから、それで悪者がみんな逃げてしまいました」
「ナニ、たかの知れた折助どもでございますが、打捨っておくと癖になりますから、少々大人げねえと思いましたけれど、二つ三つ食わしてやりました。御心配なさいますな、これからお屋敷まで送らせて差上げますから」
「市五郎どのとやら、わたしには連れの者があってそれを待っていたところ、その連れの者に沙汰をして貰いたい」
「左様でございますか、そのお連れの方とおっしゃるのはどちらへおいでになりました」
「御城内まで参りました、もう帰って来て、あのお濠の傍で、わたしを探していることと思います、早う、そこへ人をやって、わたしがここにいることを知らせて下さい」
「へえ、よろしうございますとも。そうしてそのお連れの方のお名前は何とおっしゃいますな」
「それは君といって、年もわたしと同じ位、わたしと同じこのような衣裳を着ておりますわいな」
「なるほど、お君さんとおっしゃるのでございますな、へえ、よろしうございます、今、人をやってお迎え申して差上げますから、御安心なさいまし」
「この甲府にも、わたしの親戚はあるけれど、誰にも言わないように頼みます、わたしが悪い者に出会って、あんな狼藉をしかけられたと、それを世間に知られては外聞になるから、内密に頼みます」
「へえ、もうその辺は心得たものでござりまする、人様の外聞になるようなことを、頼まれたって触れて歩くような、そんな吝な野郎でもございませんから御心配なさいますな。まあ、なんにしてもお怪我がなくてようございました」
「あの、早く連れの者に沙汰をして」
「へえ、よろしうございます、いま使に出した野郎が、もう帰って来ますから、帰って来たらすぐに飛ばせてやりますでございます、お乗物なんぞは、ここで一声怒鳴れば御用が足りるんです。嬶でもいるとお髪やお召物のお世話をして上げるんでございますけれども、まあそのうちに嬶も帰って参りますから」
「髪や着物などはかまいませぬ、あのお君が帰って来さえすれば、直ぐにお暇をして屋敷へ帰りたい、早くあの子へ沙汰をして」
「へえへえ。どうも困ったな、いつも二人や三人はゴロゴロしているくせに、今日に限って嬶までが出払ってしまうなんて。と言って俺が出向いて行けば家は空になるし……野郎どもも大概察しがありそうなものだ、ぐずぐずしていると日が暮れちまうじゃねえか、日が暮れちまった日にゃあ、お嬢様をここへお泊め申さなけりゃならなくなるんだ。そんなことにでもなってみろ、お屋敷でどんなに心配なさるか知れたもんじゃねえ」


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