GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』
現代語化
「はい」
「屋敷に行ったら、前に言った通り、わりの代わりに我慢して、主君の機嫌を取るようにしてね」
「わたくしみたいなのが、お気に入られるかどうか、心配です」
「主君は酔うと気が荒くなるけど、普段は優しい人だから、ご機嫌を取ることは難しくないわ」
「暴力は振るわないんですか」
「もしそんなことがあっても、穏やかに対応するのがお勤めなのよ」
「でも、わたくしじゃ主君の機嫌が直らないかもしれないんですけど……」
「主君が必ず暴力を使うわけじゃないし、同僚もたくさんいることだし……同僚といえばお松さん、主君や家来の機嫌よりも同僚同士の仲が面倒なのよ、気をつけないと妬まれたり嫌われたり――」
「それも心配です」
「主君のお気に入りで、同僚にも妬まれず、それが女の腕なのよ。まあ、初陣と思って頑張ってみて」
「師匠のご恩に報いると思って、頑張ります」
「それにねお松さん、あんたは女中の中で一番年下だから、まず主君を手玉にとらなきゃダメよ……クスクス、手玉って言うと失礼だけど、とにかく主君を自分のものにしちゃうの、わかる?」
「そんなこと、わたくしにできるわけないでしょ」
「ホントにあんたは子供だなあ」
原文 (会話文抽出)
「それはそうと、明日はお邸へ上らなくてはなりませぬ」
「はい」
「お邸へ上りましたなら、かねて申してある通り、わたしに代って辛抱して、殿様のお気に入るようにして下さい」
「わたしのような慣れないものが、お気に入るようになられましょうやら、それが心配でございます」
「殿様はお酒をおあがりなさるとお気が荒いけれど、平生は親切なお方だから、御機嫌の取りにくいことはありませぬ」
「お手荒なことをなさることはございますまいか」
「まあそんなことがあっても、和らかにとりなすのが御奉公と申すもの」
「それでも、かよわいわたくし風情の力で殿様の御機嫌が直りませぬ時は……」
「なにも殿様が、きっと手荒いことをなさるときまったわけではなし、また朋輩もたくさんあることだから……朋輩といえばお松や、殿様や家来方の御機嫌よりも朋輩同士の仲が小面倒なのよ、よく気をつけないと嫉まれたり憎まれたり――」
「わたしはそれも心配でございます」
「お殿様にもお気に入り、朋輩衆にも嫉まれず、それが女の腕というもの。まあ初陣と思うて乗り込んでごらん」
「お師匠様の御恩報じのつもりで、きっと勤めまする覚悟」
「それにねお松や、お前が女中衆のうちでいちばん年も若いしするから、何でもまず殿様を丸めてしまわなくては……ホホホ、丸めるというと恐れ多いけれど、やっぱり何とかして殿様をこっちのものにするのさ、ね、おわかりかえ」
「まあ、わたしにそんなことが――」
「ホントにお前はまだ子供で困ります」