中里介山 『大菩薩峠』 「来年もお山に試合がございましょうねえ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』

現代語化

「来年も試合あるってんだって?」
「あるんでしょ」
「誰勝つんだろう」
「誰が勝つかだよ」
「最近、試合なんかしねぇじゃねえか……」
「隠居じゃもんな」
「ほんと、隠居になっちゃいましたわ」
「このままじゃいられねぇよ」
「抱っこしてよ、坊や」
「ほんと、お前の腕なら、江戸に道場開いても師範になれんだろ……このまま隠居じゃねえだろ」
「今さらぼやいても無駄だ、自業自得だ」
「でも、あなた……」
「俺たちはともかく、この子だけは」
「うん」
「この子のために何とかして、俺はどうなってもいいから、坊やだけ世に出したいわ」
「言うまでもねぇよ」
「いつも隠居隠居って言うけど、隠居の私といるのが嫌になったのか」
「なんでそんなこと言うのよ」
「4年も経ったのに、表へ出たことないでしょ、近所の奥さんたちが花見だ芝居だって誘っても、一度も一緒に行ったことないわ、全部あなたを気にしてるからよ、そんなこと言われるとホントに嫌になるわ」
「嫌なら花見でも芝居でも行けよ!」
「あれ、怒ってるの?」

原文 (会話文抽出)

「来年もお山に試合がございましょうねえ」
「ある」
「どなたが勝ちましょう」
「誰が勝つか」
「お前様このごろは根っから試合をあそばしませぬ……」
「日蔭者の身ではなあ」
「ほんとにもう、日蔭者になってしまいましたわねえ」
「いつまでもこうしてはおれぬ」
「坊や、抱こをおし」
「ほんにお前様のお腕なら、この広い江戸表へ道場を開きなされても立派に師範で通ろうものを……こうしていつまでも日蔭者同様の身ではねえ」
「いまさら愚痴を言っても追っつかぬ、みんな身から出た錆じゃ」
「でもお前様……」
「私たちは日蔭者でも、この子だけはねえ」
「うむ――」
「この子のために何とかして下さいな、わたしはどうなっても構いませんけれど、坊やだけは世に出したいと思いますわ」
「それはお前に言われるまでもない」
「よく日蔭者日蔭者とお前は口癖に言うが、日蔭者の拙者といるがいやになったか」
「どうしてまあ――」
「こうして四年越し、晴々と明るい世間へ出たこともなし、御近所のお内儀さんたちが、やれ花見のお芝居のと誘って下すっても、ついぞ一日お仲間入りをしたこともないし、それというも、みんなお前さんへの心中立てではありませぬか、そんなことを言われるとホントにいやになってしまうわ」
「いやになったら花見にでも芝居にでも行け!」
「あれ、お前さんお怒りなすったの」


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