中里介山 『大菩薩峠』 「馬子どの、お前もあちらの人か」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』

現代語化

「馬子どのも、お前さんもあちらの人かい?」
「そうですとも」
「お前さんのご兄貴の文之丞様という方も、運の悪いお方ですな」
「兄上のことをご存知ですか?」
「はあ、よく存じております」
「じゃあ、机竜之助のことも」
「はあ、その竜之助様のことも」
「そうすると、5月5日の試合のこともご存じでしょうな」
「はあ、そのこともあのこともよく知っております……」
「そうか。それはいい機会だ。あの試合で兄上と竜之助の勝負は」
「あの勝負は竜之助様が勝って文之丞様が負けました」
「尋常な勝負ではなかったはず」
「尋常な勝負どころか、とんでもない勝負ですよ。文之丞様のことだから腹を立てていると思いますが、私も悲しかったり悔しかったり……」
「泣くことはないだろう。お前に関係ないことだ」
「私に関係ないどころか、大いに関係があります」
「お前の身に……あの試合が?」
「何も言いません。試合のことなんて忘れたほうがいいです」
「忘れられるわけがない。そのために私は江戸から出てきて兄上の仇討ちに出たんだ」
「お前さんが仇討ちに――誰を敵にお思いになる?」
「机竜之助だ」
「机竜之助様を?」

原文 (会話文抽出)

「馬子どの、お前もあちらの人か」
「エエわしも」
「お前様のお兄様の文之丞様というお方も、運の悪いお人だ」
「兄上のことを御承知か」
「はあ、よく知ってますだ」
「そんなら机竜之助のことも」
「はあ、その竜之助様のことも」
「してみれば、五月五日の試合のことも知ってであろうがな」
「はあ、その事もあの事もみんなようく知ってますだが……」
「そうか、それは幸い。あの試合で兄上と竜之助の勝負は」
「あの勝負は竜之助様が勝って文之丞様が負けた」
「尋常の勝負ではなかったはず」
「尋常の勝負どころか、お前様、飛んでもねえ勝負でござんす、お前様のお兄様のことだからずいぶん腹も立つべえけれど、俺も悲しいやら口惜しいやら……」
「なにも泣くことはあるまい、お前の身にはかかり合いのないことだ」
「わしにかかり合いのねえどころか、大有りでさあ」
「お前に……あの試合が?」
「何も言わねえ、試合のことなんざあ忘れちまった方がよかんべえ」
「それが忘れられるものか、それがためにわしは江戸を抜け出して兄上の仇討に出て来たのだものを」
「お前様が仇討に――誰を敵にお討ちなさるだ」
「机竜之助を」
「机竜之助様を?」


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