中里介山 『大菩薩峠』 「さて卦面に現われたるは、かくの通り『風天…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』

現代語化

「さて、占いの結果ですが、出てきたのは『風天小畜』と申します。その意味は『雲が厚くたなびいているけど雨が降らない。私は西の方からやってくる』というもの。これは、陽気が盛んなのに、小さなかげりによって雨が降って地に降りるまでには至っていない状態を表しています」
「ただし、西という陰の方から陰雲が盛んに湧き上がる形なので、やがて雨が降って地に降りることになります。それゆえ、今回の試合は大変な難所です。用心しなければいけません。しかし、最終的には雨が降って地に降りる、つまり目的を達成してお前さんの勝ちとなります。まずまずめでたい卦です」
「ただ、めでたいのはめでたいのですが、もう一つ厄介な点があります。象辞という卦の説明に、『夫婦が仲違いして、妻が夫を正しく導くことができない』とあります。ここでも、先ほど陽気が盛んなれどもかげりに妨げられていると言ったように、ここにも夫婦の対立が示されています。どうもこの卦には女性の影がちらついています」
「奥さんに気を付けなさい。お前さんの奥さんがよろしくない。どうもお前さんに邪魔をしようとしているようです。夫婦の対立というのは、妻の不貞や不敬もありますが勿論、夫にも落ち度がないとはいえません。なので、奥さんをしっかり締め付けておかないと。二本棒じゃいかん……」
「ばかなことを言うな。二本棒って何だよ?先生はまだ独身だろ。若先生、こんなインチキ占いなんか聞いてる暇はないよ。さあ、頂上まで駆け上りましょう」

原文 (会話文抽出)

「さて卦面に現われたるは、かくの通り『風天小畜』とござる、卦辞には『密雲雨ふらず我れ西郊よりす』とある、これは陽気なお盛んなれども、小陰に妨げられて雨となって地に下るの功未だ成らざるの象じゃ」
「されども、西郊と申して陰の方より、陰雲盛んに起るの形あれば、やがて雨となって地に下る、それだによって、このたびの試合はよほどの難場じゃ、用心せんければならん。が、しかし、結局は雨となって地に下る、つまり目的を遂げてお前様の勝ちとなる、まずめでたい」
「めでたいにはめでたいが、また一つの難儀があるで、よいか、よく聞いておきなされ。象辞にこういう文句がござる、『夫妻反目、室を正しゅうする能わざるなり』と。ここじゃ、それ、前にも陽気盛んなれども小陰に妨げらるるとあったじゃ、ここにも夫妻反目とあって、どうもこの卦面には女子がちらついている」
「細君に用心さっしゃれ、お前様の奥様がよろしくないで、どうもお前様の邪魔をしたがる象じゃ。夫妻反目は妻たるものの不貞不敬は勿論なれども、その夫たるものにも罪がないとは申し難い。で、細君をギュッと締めつけておかぬとな、二本棒ではいけない……」
「たわけたことを申すな、二本棒とは何じゃ、先生にはまだ奥様も細君もないのだ。若先生、こんなイカサマ売卜を聞いているは暇つぶし、さあ頂上に一走り致しましょう」


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