中里介山 『大菩薩峠』 「七兵衛さん、七兵衛さん」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』

現代語化

「七兵衛さん、七兵衛さん」
「嘉右衛門さん、おはようございます。どこへお出かけですか?」
「ちょっと見舞いに行こうと思って」
「見舞いですか?どこへ」
「まだ聞いてないんですか?材木屋の藤三郎さんが今朝早く捕まったんですって」
「材木屋のあの藤三郎さんがですか?」
「そうだよ。お役所へ連れて行かれて調べられてるんだって」
「それはびっくりですね。どうしたんですか?」
「よくわかんないけど、盗賊に関わったんだとか」
「盗賊に関わったんですか?」
「あの人みたいな真面目な人が盗賊に関わるなんて、おかしいですよね」
「こないだ、甲州の上野原のお役所へ泥棒が入ったんですって」
「えっ、上野原のお役所ですか?」
「そうなんです。お役所ってすごい胆力がいる泥棒ですね。でも、泊まってた武士に見つかって逃げたみたいなんです。そしたら、その泥棒が逃げるときに書付を部屋に落としたらしく、それを拾われたみたいなんです」
「書付を拾われたんですか?」
「で、その書付が藤三郎さんちの材木売買の領収書で、ちゃんと印鑑も押してあったんだって」
「それは大変な災難ですね。私も見舞いに行きたいんですけど、昨晩ちょっとけがをしてしまって。嘉右衛門さんからよろしくお伝えください」
「けがをされたんですか?」
「いや、たいしたことじゃないんです。山で転んで腰をちょっと強打しただけですから」
「それはいけませんね。大事にしてください。それじゃあ行ってきます」
「お松坊、今から江戸に行こう」
「でも、おじさん、けがは大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。馬でも駕籠でも使えばいいんだから」
「やったー」

原文 (会話文抽出)

「七兵衛さん、七兵衛さん」
「これは嘉右衛門さん、朝っぱらからどちらへ」
「なに、ちっと見舞に行こうかと思って」
「お見舞に? どこへ」
「まだお聞きなさらねえか、材木屋の藤三郎さんが今朝早く上げられなすって」
「材木屋のあの藤三郎さんが?」
「そうだよ、お役所へ上げられてお調べの最中だよ」
「それはまあ、どうしたわけで」
「何だかわしもよくは知らねえが、盗賊のかかわり合いだということでがす」
「盗賊のかかり合い?」
「あの正直な人が盗賊のかかり合いとは、おかしいことですね」
「この間、甲州の上野原のお陣屋へ盗賊が入ったそうで」
「ナニ、上野原のお陣屋へ?」
「そうですよ、お陣屋へ入るとはずいぶん度胸のいい泥棒ですね。ところが泊り合せたお武家に見つけられて、その泥棒が逃げ出したが、その時に泥棒が書付を一本お座敷へ落したそうで、そいつを拾われちまった」
「書付を拾われた?」
「それからね、どうしたものやらその書付が藤三郎さんところの材木売渡しの受取証文で、ちゃんと印形まで据わっている」
「それはとんだ災難、私もお見舞に上らなくては済みませんが、昨晩少しばかり怪我をしたものだから、お前さんからよろしく申しておいておくんなさい」
「怪我をなすった?」
「なあに、大したことはありません、山でころんで腰をちっとばかり強く打っただけのことで」
「そりゃいけねえ、まあ大切にした方がいい、それじゃ行って来ますから」
「お松坊、今から江戸へ行こうや」
「でも、おじさんお怪我は?」
「なあに、馬も駕籠もあらあな」
「嬉しいこと」


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