中里介山 『大菩薩峠』 「お浜どのとやら、御用の筋は?」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 中里介山 『大菩薩峠』

現代語化

「お浜さん、用件は?」
「今日は兄に代わってお願いに来ました」
「何のことですか?」
「5日の御岳山の大試合のことです……」
「それは文之丞さんがとても心配して、ご飯も食べられず、夜も眠れないみたいなので、妹としては見てられません」
「大事な試合だから、心配なのはわかります。私たちも気を抜いてません」
「いえいえ、兄はあなた様には勝てません。同じ逸見道場で鍛えたとはいえ、竜之助様と私たちとは雲泥の差です。それに、相手があなた様なんて、兄がかわいそうです」
「それは言い過ぎです。逸見先生からすれば、私たちは破門同然ですが、文之丞さんは先生のお気に入りで、甲源一刀流の正統後継者だと言われてます」
「世間の評価なんて関係ありません。兄はあなた様には勝てません。断言します」
「謙遜ですね」

原文 (会話文抽出)

「お浜どのとやら、御用の筋は?」
「今日、兄を差置き折入ってお願いに上りましたは」
「ほかでもござりませぬ、五日の日の御岳山の大試合のことにつきまして……」
「その儀につきまして、兄はことごとく心を痛め、食ものどへは通らず、夜も眠られぬ有様でござりまする故、妹として見るに忍びませぬ」
「大事の試合なれば、そのお心づかいも御尤もに存じ申す、我等とても油断なく」
「いえいえ、兄は到底あなた様の敵ではござりませぬ、同じ逸見の道場で腕を磨いたとは申せ、竜之助殿と我等とは段違いと、つねづね兄も申しておりまする。人もあろうに、そのあなた様に晴れのお相手とは何たること、兄の身が不憫でなりませぬ」
「これは早まったお言葉、逸見先生の道場にて我等如きは破門同様の身の上なれど、文之丞殿は師の覚えめでたく、甲源一刀流の正統はこの人に伝わるべしとさえ望みをかけらるるに」
「人がなんと申しましょうとも、兄はあなた様の太刀先に刃向う腕はないと、このように申し切っておりまする」
「それは御謙遜でござろう」


青空文庫現代語化 Home リスト