GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 直木三十五 『巌流島』
現代語化
「小次郎もすごいヤツだったぜ。試合は恨みじゃねえから勝てばいいんだよ。もし止めを刺さずに生かしてやったら、それこそ最高じゃないか」
「わざと時間を遅らせて小次郎を疲れさせたのは卑怯な作戦だ」
「そもそも兵法ってのは、昔の人は刀術を表で兵略を裏として考えてたんだって。それが後に軍略と剣術に分かれたのは江戸時代以降なんだってさ。武蔵の時代までは兵法と剣術って同じものだったんだ。戦の駆け引きと試合の駆け引きは同じだったんだよ。たいていの試合で武蔵は相手をおちょくるためにちょっと遅れてたけど、時にはわざと早く待ってたこともあったみたい。吉岡一門との試合ではそうやってたんだって。あと、伊藤一刀斎とかいう人も、敵を罠にはめてだますのが極意の一つにしてたみたいで、敵の罠に自分からは乗らないように常に気を付けてたんだって。だから、武蔵はこの批評に答える必要はなかったと思うし、もしかしたら後の人が批判したことで、当時の噂ではなかったのかもしれないな」
「小次郎の槍が貴方の眉間を傷つけたそうですね」
「よーく見てごらんよ。子供の時にコブができてちょっと跡が残ってるけど、刀傷なんてあるか?」
原文 (会話文抽出)
「止めを刺さなかった」
「小次郎も天晴な若者である。試合の勝負は遺恨の勝負でないから勝てばいい。もし止めをささずに生返ったらそれこそ嬉しい話ではないか」
「時刻を遅らせて小次郎を待ち疲れさせたのは卑怯な謀である」
「そもそも兵法とは、古人の云っているとおり、刀術を表とし兵略を裏としたもので、後に軍略と剣術とに別々になったのは、徳川以後の事である。武蔵の時代まで、兵法と剣術とは同一の物で、戦の駈引と試合の駈引と合一点から出ていた。大抵の試合に武蔵が敵を苛立たせる為め、やや遅れて行っているが、時としてこの裏を掻いて早くより待っていた事もある。吉岡一門と試合した時などこの方法を採っている。そして伊藤一刀斎なども、詭計をもって敵を計ると云う事を極意の一つにしているし、敵のこの謀に己が心の乗らぬように常に戒めている。従って、武蔵はこう云う批評に対して答える必要は無かったであろうし、あるいは後世の人が批評した非難で当時の噂でなかったかも知れない」
「小次郎の鋩子尖が貴殿の眉間を傷つけたそうで御座るが」
「よっく御覧なされ、幼い時腫物をして少しあとが御座るが刀傷があるか無いか」