芥川龍之介 『杜子春』 「どうだな。おれの弟子になつた所が、とても…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『杜子春』

現代語化

「どうだ。俺の弟子になったって、仙人になるなんてのは無理だろう」
「なれません。なれませんけど、でもなれなかったことも、かえって嬉しい気がします」
「いくら仙人になれたとしても、あの地獄の森羅殿で、親が鞭打たれてるのに、黙ってはいられないんです」
「もしお前が黙ってたら――」
「もしお前が黙ってたら、俺はお前の命をその場で絶ってたんだ。――お前はもう仙人になりたいって思いも持ってないだろう。大金持ちになることなんてのも、もうどうでもいいだろうな。じゃぁお前はこれから、何になったらいいと思う?」
「何になっても、人間らしい、まともな暮らしをしたいです」
「その言葉を忘れるなよ。じゃぁ俺は今日限り、二度とお前に会わないから」
「おお、よかった。今思い出したけど、俺が泰山の南の麓に家を持ってるんだ。その家を畑ごとお前にやるから、さっさと行って住んだらいい。今頃はちょうど家の回りに、桃の花が一面に咲いてるだろうよ」

原文 (会話文抽出)

「どうだな。おれの弟子になつた所が、とても仙人にはなれはすまい。」
「なれません。なれませんが、しかし私はなれなかつたことも、反つて嬉しい気がするのです。」
「いくら仙人になれた所が、私はあの地獄の森羅殿の前に、鞭を受けてゐる父母を見ては、黙つてゐる訳には行きません。」
「もしお前が黙つてゐたら――」
「もしお前が黙つてゐたら、おれは即座にお前の命を絶つてしまはうと思つてゐたのだ。――お前はもう仙人になりたいといふ望も持つてゐまい。大金持になることは、元より愛想がつきた筈だ。ではお前はこれから後、何になつたら好いと思ふな。」
「何になつても、人間らしい、正直な暮しをするつもりです。」
「その言葉を忘れるなよ。ではおれは今日限り、二度とお前には遇はないから。」
「おお、幸、今思ひ出したが、おれは泰山の南の麓に一軒の家を持つてゐる。その家を畑ごとお前にやるから、早速行つて住まふが好い。今頃は丁度家のまはりに、桃の花が一面に咲いてゐるだらう。」


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