GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『杜子春』
現代語化
「そうか。それはかわいそうだなぁ。じゃぁ俺がいいことを教えてあげよう。今この夕日の中に立って、お前の影が地面に映ったら、そのおなかに当たる場所を夜中に掘ってみたらいい。きっと車が一杯の――」
「いや、お金はもういらないんです」
「金はもういらない? ふうん、贅沢に飽きたんだろうな」
「いや、贅沢に飽きたんじゃないんです。人間というものに愛想がつきたんです」
「それは面白いな。どうして人間に愛想が尽きたんだ?」
「人間はみんな薄情です。私がお金持ちだったときは、お世辞も追従もしてきましたけど、一度貧乏になってみてください。優しくもしてくれません。そんなことを考えると、たとえもう一回お金持ちになったとしても、何もならないような気がするんです」
「そうか。いや、お前は若いのに、感心するくらいもののわかる男だな。じゃぁこれからは貧乏をしても、楽に暮らすつもりか」
「それも今の私にはできません。だから私はあなたの弟子になって、仙術を習いたいと思うんです。いいえ、隠さないでください。あなたは偉い仙術者でしょう。仙術者じゃなかったら、一晩で私を天下の大金持ちにするなんてできませんよね。どうか私の先生になって、すごい仙術を教えてください」
「実は俺は峨眉山に住んでる、鉄冠子って仙術者なんだ。最初にお前の顔を見た時、何か物わかりがよさそうだったから、2回も大金持ちにしてやったんだが、そんなに仙人になりたいなら、俺の弟子にしてやってもいいよ」
原文 (会話文抽出)
「私ですか。私は今夜寝る所もないので、どうしようかと思つてゐるのです。」
「さうか。それは可哀さうだな。ではおれが好いことを教へてやらう。今この夕日の中へ立つて、お前の影が地に映つたら、その腹に当る所を、夜中に掘つて見るが好い。きつと車に一ぱいの――」
「いや、お金はもう入らないのです。」
「金はもう入らない? ははあ、では贅沢をするにはとうとう飽きてしまつたと見えるな。」
「何、贅沢に飽きたのぢやありません。人間といふものに愛想がつきたのです。」
「それは面白いな。どうして又人間に愛想が尽きたのだ?」
「人間は皆薄情です。私が大金持になつた時には、世辞も追従もしますけれど、一旦貧乏になつて御覧なさい。柔しい顔さへもして見せはしません。そんなことを考へると、たとひもう一度大金持になつた所が、何にもならないやうな気がするのです。」
「さうか。いや、お前は若い者に似合はず、感心に物のわかる男だ。ではこれからは貧乏をしても、安らかに暮して行くつもりか。」
「それも今の私には出来ません。ですから私はあなたの弟子になつて、仙術の修業をしたいと思ふのです。いいえ、隠してはいけません。あなたは道徳の高い仙人でせう。仙人でなければ、一夜の内に私を天下第一の大金持にすることは出来ない筈です。どうか私の先生になつて、不思議な仙術を教へて下さい。」
「いかにもおれは峨眉山に棲んでゐる、鉄冠子といふ仙人だ。始めお前の顔を見た時、どこか物わかりが好ささうだつたから、二度まで大金持にしてやつたのだが、それ程仙人になりたければ、おれの弟子にとり立ててやらう。」