GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 田山花袋 『蒲団』
現代語化
「わかってます」
「僕が悪いので、僕が一番に離れなきゃいけません。先生はさっき、この恋愛を承諾してくださるって言ったけど、さっきお父さんが言ったことでは、まだ納得できないみたいで……」
「どういう意味だ」
「本当に約束しないというのが不満だって言うんです」
「でも、これはさっきもよく話したはずだよ。今は許可も不許可もしない。独り立ちもできない勉強中の身で、2人でこの世の中に飛び出したいって言うのは、信頼できない。だから私は今は3、4年はお互い勉強したほうがいいと思う。本気なら、ここまで言ったことはわかるはずだ。僕がウソついて芳子を他人に嫁がせるとかなら、不満だろう。でも神に誓っていうか、先生の前で言うけど、3年間は芳子を自分から嫁に出すようなことはしない。この世は神の思し召し次第で、罪人が神の裁きを待つしかないので、私は芳子を君にあげるとまでは言えない。今の心が許さないし、今の2人の関係は神の思し召しではないと思う。3年経って、神の思し召しに適うかどうかは今からは言えないけど、君の心が本当に誠実でまじめなら、必ず神の思し召しにも適うと思うよ」
「お父さんはそこまでわかってる」
「3年、君のために待つ。君を信じるに値する3年の猶予をあげるって言われたのは、本当にありがたいことだよ。他人の娘を誘惑するようなやつには真面目に話す必要はないと言って、そのまま芳子をつれて帰られても、君は恨むことはできないのに、3年待とう、君の誠意がわかるまでは、芳子を他人に嫁がせるようなことはしないって言うんだ。本当にありがたい言葉だ。許可するって言われるよりもずっと恩がある。これがわからないかい?」
原文 (会話文抽出)
「君、僕は先程から聞いていたが、あれほどに言うお父さんの言葉が解らんですか。お父さんは、君の罪をも問わず、破廉恥をも問わず、将来もし縁があったら、この恋愛を承諾せぬではない。君もまだ年が若い、芳子さんも今修業最中である。だから二人は今暫くこの恋愛問題を未解決の中にそのままにしておいて、そしてその行末を見ようと言うのが解らんですか。今の場合、二人はどうしても一緒には置かれぬ。何方かこの東京を去らなくってはならん。この東京を去るということに就いては、君が先ず去るのが至当だ。何故かと謂えば、君は芳子の後を追うて来たのだから」
「よう解っております」
「私が万事悪いのでございますから、私が一番に去らなければなりません。先生は今、この恋愛を承諾して下されぬではないと仰しゃったが、お父様の先程の御言葉では、まだ満足致されぬような訳でして……」
「どういう意味です」
「本当に約束せぬというのが不満だと言うのですじゃろう」
「けれど、これは先程もよく話した筈じゃけえ。今の場合、許可、不許可という事は出来ぬじゃ。独立することも出来ぬ修業中の身で、二人一緒にこの世の中に立って行こうと言やるは、どうも不信用じゃ。だから私は今三四年はお互に勉強するが好いじゃと思う。真面目ならば、こうまで言った話は解らんけりゃならん。私が一時を瞞着して、芳を他に嫁けるとか言うのやなら、それは不満足じゃろう。けれど私は神に誓って言う、先生を前に置いて言う、三年は芳を私から進んで嫁にやるようなことはせんじゃ。人の世はエホバの思召次第、罪の多い人間はその力ある審判を待つより他に為方が無いけえ、私は芳は君に進ずるとまでは言うことは出来ん。今の心が許さんけえ、今度のことは、神の思召に適っていないと思うけえ。三年経って、神の思召に適うかどうか、それは今から予言は出来んが、君の心が、真実真面目で誠実であったなら、必ず神の思召に適うことと思うじゃ」
「あれほどお父さんが解っていらっしゃる」
「三年、君が為めに待つ。君を信用するに足りる三年の時日を君に与えると言われたのは、実にこの上ない恩恵でしょう。人の娘を誘惑するような奴には真面目に話をする必要がないといって、このまま芳子をつれて帰られても、君は一言も恨むせきはないのですのに、三年待とう、君の真心の見えるまでは、芳子を他に嫁けるようなことはすまいと言う。実に恩恵ある言葉だ。許可すると言ったより一層恩義が深い。君はこれが解らんですか」