田山花袋 『蒲団』 「今日来てよ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 田山花袋 『蒲団』

現代語化

「今日来てたよ」
「誰?」
「2階に……あの、芳子さんの彼氏」
「そっか……」
「今日1時ごろ、『ごめんください』って玄関に来たから、俺が出たら、顔丸くて、絣の羽織に白縞の袴着た書生さんがいるわけ。また原稿持って来た書生さんかと思ったら、『横山さんはいらっしゃいますか?』って言うわけよ。はて、変だなと思って名前聞いたら、田中……。あ、それでその人だって思ったの。ひどいよねえ、あんな人、あんな書生さんを彼氏にせんでも、いくらでももっといい人いるじゃん。芳子って相当変わってるよね。あれじゃとてもダメだよ」
「それでどうしたの?」
「芳子は嬉しそうだったけど、なんだか落ち着かない様子だったよ。俺がお茶持って行くと、芳子は机の前に座ってる。その前にあの人がいて、なんか話してたのを急にやめて黙っちゃった。俺は気まずくなってすぐ降りてきちゃったけど……なんだか変だよね……今の若い人ってよくそんなことできるよね。俺の時代じゃ男に見られるのすら恥ずかしくて恥ずかしくてしょうがなかったのに……」
「時代が違うからな」
「時代が違っても、さすがに新しすぎると思ったよ。堕落書生と一緒じゃん。外見が似てるだけで、中身はそんなことないんだろうけど、なんだか変よ」
「そんなのはどうでもいい。それでどうしたの?」
「お鶴(下女)が行ってあげるって言うのに、『いい』って言って、自分で行って、餅菓子と焼き芋買ってきて、もてなしてたみたいよ。……お鶴も笑ってたよ。お湯あげに行ったら、2人で美味しそうにおさつ食べてたんですって……」
「それからずっと長い間、大きな声で話してたよ。議論みたいなことも言ってたし、芳子も負けてなかったみたいだった」
「それでいつ帰ったの?」
「少し前」
「芳子いるか?」
「いないよ。道がわからないから、一緒にそっちまで送りに行ってくるって出かけたんだ」
「どこまで行ったの?」
「神楽坂まで」
「おかえり」
「芳子さん、芳子さん」
「はーい」

原文 (会話文抽出)

「今日来てよ」
「誰が」
「二階の……そら芳子さんの好い人」
「そうか……」
「今日一時頃、御免なさいと玄関に来た人があるですから、私が出て見ると、顔の丸い、絣の羽織を着た、白縞の袴を穿いた書生さんが居るじゃありませんか。また、原稿でも持って来た書生さんかと思ったら、横山さんは此方においでですかと言うじゃありませんか。はて、不思議だと思ったけれど、名を聞きますと、田中……。はア、それでその人だナと思ったんですよ。厭な人ねえ、あんな人を、あんな書生さんを恋人にしないたッて、いくらも好いのがあるでしょうに。芳子さんは余程物好きね。あれじゃとても望みはありませんよ」
「それでどうした?」
「芳子さんは嬉しいんでしょうけど、何だか極りが悪そうでしたよ。私がお茶を持って行って上げると、芳子さんは机の前に坐っている。その前にその人が居て、今まで何か話していたのを急に止して黙ってしまった。私は変だからすぐ下りて来たですがね、……何だか変ね、……今の若い人はよくああいうことが出来てね、私のその頃には男に見られるのすら恥かしくって恥かしくって為方がなかったものですのに……」
「時代が違うからナ」
「いくら時代が違っても、余り新派過ぎると思いましたよ。堕落書生と同じですからね。それゃうわべが似ているだけで、心はそんなことはないでしょうけれど、何だか変ですよ」
「そんなことはどうでも好い。それでどうした?」
「お鶴(下女)が行って上げると言うのに、好いと言って、御自分で出かけて、餅菓子と焼芋を買って来て、御馳走してよ。……お鶴も笑っていましたよ。お湯をさしに上ると、二人でお旨しそうにおさつを食べているところでしたッて……」
「そして随分長く高い声で話していましたよ。議論みたいなことも言って、芳子さんもなかなか負けない様子でした」
「そしていつ帰った?」
「もう少し以前」
「芳子は居るか」
「いいえ、路が分からないから、一緒に其処まで送って行って来るッて出懸けて行ったんですよ」
「何処まで行らしった?」
「神楽坂まで」
「おかえりなさいまし」
「芳子さん、芳子さん」
「はアーい」


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