田山花袋 『蒲団』 「何アに、其処でちょっと転んだものだから」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 田山花袋 『蒲団』

現代語化

「ちょっといつ転んだだけだよ」
「えー、泥酔じゃん。またベロベロだったんでしょ」
「ちげぇって……」
「芳ちゃんどこ行ったの?」
「今朝、友達と中野に散歩行ってくるって。もうそろそろ帰るかも。何か用?」
「あ、ちょっと……」
「昨日は遅かった?」
「うん。友達を新橋に迎えに行ったんだって。4時過ぎに出かけて、8時ごろ帰ってきたよ」
「どうしたの?」
「いや……でもねえ姉ちゃん」
「正直に言ってね。こないだの京都みたいなことになったら困るから、芳子を俺んちに置いて、しっかり監視しようと思うんだ」
「あっ、いいかも。芳ちゃんって本当にしっかりしてるから、私みたいな頭悪い人間じゃ……」
「いや、そういうことじゃないんだけどね。自由にしすぎると本人のためにならないから、ちょっと家に置いて、しっかり面倒見てみようかなって」
「それいいかも。芳ちゃんもね……どこも悪くないし、賢くて、今の時代には珍しいくらいちゃんとしてるんだけど、一つ欠点があってね。男友達と平気で夜に街を歩いたりするのよ。それさえやめさせられたらいいんだけどね、よく言うんだけど。芳ちゃんはまた『小母さん、また古いこと言ってるわ』って笑ってるの。こないだとか男と歩いたりしてたら、角の交番に不審に思われて、巡査さんが家の前に張り込んでたんだって。そんなことしないから気にしないでって、芳ちゃんは言ってるけど……」
「それはいつのこと?」
「去年の暮れかな」
「ハイカラすぎるよね」
「それにしてもどうしたんだろうね。若いのに、夜遅くに一人でうろつくなんて」
「もう帰るよ」
「こんなのってよくあんの?」
「そんなことないよ。夏の夜だから、まだ明るいうちに散歩してるだけだよ」

原文 (会話文抽出)

「何アに、其処でちょっと転んだものだから」
「だッて、肩まで粘いているじゃありませんか。また、酔ッぱらったんでしょう」
「何アに……」
「芳さん、何処に行ったんです」
「今朝、ちょっと中野の方にお友達と散歩に行って来ると行って出たきりですがね、もう帰って来るでしょう。何か用?」
「え、少し……」
「昨日は帰りは遅かったですか」
「いいえ、お友達を新橋に迎えに行くんだって、四時過に出かけて、八時頃に帰って来ましたよ」
「どうかしたのですの?」
「何アに……けれどねえ姉さん」
「実は姉さんにおまかせしておいても、この間の京都のようなことが又あると困るですから、芳子を私の家において、十分監督しようと思うんですがね」
「そう、それは好いですよ。本当に芳子さんはああいうしっかり者だから、私みたいな無教育のものでは……」
「いや、そういう訳でも無いですがね。余り自由にさせ過ぎても、却って当人の為にならんですから、一つ家に置いて、十分監督してみようと思うんです」
「それが好いですよ。本当に、芳子さんにもね……何処と悪いことのない、発明な、利口な、今の世には珍らしい方ですけれど、一つ悪いことがあってね、男の友達と平気で夜歩いたりなんかするんですからね。それさえ止すと好いんだけれどとよく言うのですの。すると芳子さんはまた小母さんの旧弊が始まったって、笑っているんだもの。いつかなぞも余り男と一緒に歩いたり何かするものだから、角の交番でね、不審にしてね、角袖巡査が家の前に立っていたことがあったと云いますよ。それはそんなことは無いんだから、構いはしませんけどもね……」
「それはいつのことです?」
「昨年の暮でしたかね」
「どうもハイカラ過ぎて困る」
「それにしてもどうしたんだろう。若い身空で、こう遅くまで一人で出て歩くと言うのは?」
「もう帰って来ますよ」
「こんなことは幾度もあるんですか」
「いいえ、滅多にありはしませんよ。夏の夜だから、まだ宵の口位に思って歩いているんですよ」


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