田中貢太郎 『竇氏』 「お前は何人だ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 田中貢太郎 『竇氏』

現代語化

「お前は誰だ?」
「身分が低い者ですから、名前を言ってもお分かりにならないでしょう」
「何しに来た?」
「あちらのお嬢さんが南三復の奥さんになることになっているので、おやめください。そうでないと、お嬢さんの命を奪うことになってしまいます」
「旦那様、昨日南さんに会ってきましたが、やっぱり私が言った通り、南さんは百姓の罠にかかったんですって。こないだ別荘の帰りに雨に降られて、雨宿りに行ったときに酒を出されたそうです。それで感心な百姓だと思って、いろいろ持っていってあげたりしたところ、あちらは何か企んでたみたいです」
「そうなのか?」
「本当に、南さんが手を出したんじゃないんですって」
「そんなことがあるわけないだろ。名家の旦那様が、何の理由で田舎の汚い女に手を出したりするんだ?金は腐るほどあるし、女が欲しいならいくらでもキレイなのが手に入るだろう?こうなったのも、いくら田舎の百姓でも、ちょっとした恩を受けたらそのままにできないっていう、立派な人柄のせいだよ」
「じゃ、決めようか」

原文 (会話文抽出)

「お前は何人だ」
「賤しいものでございますから、名を申しあげてもお解りになりますまい」
「なにしに来た」
「当方のお嬢さんを南三復の奥さんになされようとしておりますから、それであがりました、どうか南三復の奥さんになさらないようにしてくださいまし、そうでないと、お嬢さんの生命を奪らなくては、ならないようになりますから」
「旦那様、南さんに昨日逢ってまいりましたが、やっぱりわたしが申したとおり、南さんは百姓のわなにかかったものでございますよ、いつか別荘の帰りに雨に逢って、雨宿りに往って酒を出されたものですから、感心な百姓だと思って、ものを持っててやったりなんかしたものですから、先方はものにしようとして、あんなことになったのですって」
「そうかね」
「確かに、南さんが手を出したものじゃないかね」
「そんなことがあってたまるものですか、あんな世家の旦那が、何の好奇に土百姓の汚い女なんかに、手を出すものですか、金は唸るほどあるし、女が欲しけりゃ、いくらでも娟好な女が手に入るじゃありませんか、こんなことになったのも、あんな土百姓にでも、ちょっとした恩になると、それをそのままにしていられないという、立派な人柄からきたものでございますよ」
「では、定めようか」


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