田中貢太郎 『緑衣人伝』 「何人も遠慮する者がありませんから、自由に…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 田中貢太郎 『緑衣人伝』

現代語化

「誰もいないから、気楽にしてください」
「お隣さんって言ってましたよね?どなたですか?」
「すぐわかりますよ」
「どこなんだろう?」
「あなたは、夕方になると必ずここを通ってますけど、どこか行くんですか?」
「どこにも行かないんだけど、夕方になると寂しいから散歩してるの」
「じゃあ、今夜一緒にゆっくり話しましょうよ」
「あなたは住所も名前も言わないけど、何ていうんですか?」
「さあ、何ていうんでしょう」
「もうそういう仲なんだから、名前言ってもいいでしょ」
「そのうち、あなたが嫌になったとしても、分かる時がきますよ。わざわざ聞かなくてもいいでしょ」
「でも、名前くらいは知りたいじゃないですか。教えてくれてもいいでしょ」
「私が若い奥さんになったと思ってください。それでもどうしても名前が知りたいなら、私はいつもこの緑の服を着てるでしょ」
「緑衣人とでも呼べばいいですか?」
「じゃ、緑衣人ってことにしましょう。名前はそれでいいとして、住所は聞きたいですね」
「住所なんていいじゃないですか。すぐわかりますよ。あなたのすぐ近くにいるんですから」

原文 (会話文抽出)

「何人も遠慮する者がありませんから、自由にしていらっしゃい」
「あなたは、お隣の方だと言いましたね、何方です」
「今に判りますよ」
「さあ、どこだろう」
「あなたは、夕方になると、いつもこの前を通っているようですが、どちらか往く所がありますか」
「別に往く所はありませんが、夕方がくると、淋しいから、歩いてるのよ」
「では、今晩は、二人でゆっくり話そうじゃありませんか」
「あなたは所も言わなければ、名も言わないが、何という名です」
「さあ、何という名でしょう」
「いいでしょう、こうした関係になってるじゃないか、名を言ったっていいでしょう」
「そのうちには、あなたが厭だと思っても、わかる時がありますよ、わざわざ訊かないたっていいでしょう」
「しかし、名ぐらいは訊きたいじゃないか、聞かしてくれてもいいでしょう」
「若い奥様ができたと思ってくださりゃいいじゃないの、それでも、しいて名が聞きたいなら、私はいつも、この緑の衣を着ているでしょう」
「緑衣人とでも言ってくださいよ」
「では、緑衣人としておこう、名は、まあ、それでいいとして、所を聞きたいね」
「所なんかいいじゃありませんか、今にすぐわかりますよ、眼と鼻の間にいる者ですから」


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