田中貢太郎 『愛卿伝』 「おいで、お前にはいろいろ礼も言いたい、よ…

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青空文庫図書カード: 田中貢太郎 『愛卿伝』

現代語化

「おいで、お礼を言いたいんだ。よく来てくれたね」
「お母さんの世話をした上、私のために貞節を守ってくれて、お礼のしようがないよ。この際改めてお礼を言うよ」
「身分の低い私を、面倒見ていただいてありがとうございます。お母様を私がお見送りしましたが、十分なお礼ができなくて申し訳ありません。盗人に襲われて自害したのは、少しはお礼ができると思ったからです。お礼を言われるなんて恥ずかしいです」
「いや、お礼を言うよ。それにしても、お前を盗人に殺したのは、残念で仕方ないよ。今、お前はあの世にいるから、お母さんもどうしているか分かるだろうけど、お母さんは今、どうしてる?」
「お母様は、罪のない方でしたから、もう人間に生まれ変わっています」
「お前は、なぜずっとそのままでいるの?」
「私は、貞節を守った功徳で、無錫の宋という家に男の子として生まれることになっています。でも、あなたとのご縁が強すぎて、一度あなたにお会いするまで、生まれる時期を遅らせているんです。でも、もうお会いしたので、明日生まれます。もしあなたがこれまでのご縁を忘れないなら、一度宋家まで来て、私を見てください。笑ってその証拠をお見せしますから」
「私は、帰らなければなりません。これで別れます」

原文 (会話文抽出)

「おいで、お前にはいろいろ礼も言いたい、よくきてくれた」
「お前はお母さんのお世話をしてくれたうえに、わしのために節を守ってくれて、なんともお礼の言いようがない、わしは、今、更めて礼を言うよ」
「賤しい身分の者を、御面倒を見ていただきました、お母様は私がお見送りいたしましたが、思うことの万分の一もできないで、申しわけがありません、賊に迫られて自殺したのは幾分の御恩報じだと思いましたからであります、お礼をおっしゃられては恥かしゅうございます」
「いや、お礼を言う、それにしても、お前を賊に死なしたのは、残念で残念でたまらない、今、お前は冥界におるから、お母さんのことも判ってるだろうが、お母さんは、今、どうしていらっしゃる」
「お母様は、罪のない体でしたから、もう人間に生れかえっております」
「お前は、何故、いつまでもそうしておる」
「私は、私の貞烈のために、無錫の宋という家へ、男の子となって生れることになっておりますが、あなたに情縁が重うございますから、一度あなたにお眼にかかるまで、生れ出る月を延ばしております、が、もうお眼にかかりましたから、明日は往って生れます、もしあなたがこれまでの情誼をお忘れにならなければ、一度宋家へ往って、私を御覧になってくださいまし、笑ってその験をお眼にかけます」
「私は、帰らなくてはなりません、これでお別れいたします」


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