田中貢太郎 『富貴発跡司志』 「―県の―は、米を二千石持っておったが、こ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 田中貢太郎 『富貴発跡司志』

現代語化

「―県の―は、2000石のお米を貯めてたけど、この頃の干ばつと虫のせいで米の値段が上がって、お隣からのお米も入ってこなくなって、餓死者が続出しちゃったから、倉庫を開けてお米を配ったり、お粥を作って貧乏人を助けたんだって。そしたら、命拾いした人がいっぱいいるってことで県神が本庁に報告してきたから、知事に差し出されたんだけど、もう天国に報告して寿命を30年伸ばして、給料も1万両もらえることになったみたい」
「―村の―さんは、お姑さんにすごく孝行で、お姑さんが重い病気で医者に診てもらっても治らなくて、身を清めてお天気に祈って『代わりに死にたいです』って言ったら自分の太ももを切って差し出したんだって。そしたら病気が治ったんだって。それでちょっと前に天からのメモが降りてきて、―さんの孝行が天国にも伝わって、神様も感心してたから、将来偉い子供を2人産んで、みんなお金持ちになって、家の名を上げ、最後は高い身分のお嫁さんになって報われることになるんだって。知事が本庁に報告して、もう福を記録する書類に書き込まれたよ」
「―姓―役人は、高い爵位と給料をもらってるのに、国の役に立たないのに、ただお金儲けのことばっかり考えて、300両受け取って法律を曲げて裁判をしたり、500両もらっていいことを悪いことにして良い人を傷つけたりしてたから、知事が天国に報告して罪を重くしようとしてるけど、前世で良いことをしてたみたいで、今は不正なお金と地位を楽しんでる。でも、数年後に一族滅亡の目に遭うことになってるから、もう命令をいただいて、悪事を記録する書類に名前が載ってるよ」
「―郷―は、田んぼが数十町歩あるけど、欲張りで満足できなくて、隣接地を自分のものにしてたけど、そのやり方がすごく悪くて、頼りにならない人を騙して安く買ったり、中には定価を払わないで相手を怒らせて死なせてしまった人もいるから、冥府から本庁に報告されて、捕まって牢に入れられたけど、もう牛になって隣りの家に生まれ変わって、自分のした悪事を償ってるよ」
「皆さん、それぞれ良いことを褒めて悪いことを罰して、完璧にやってくれてるんだけど、でも、世の中ってのも決まりがあって、人の不幸な時ってのも決まってる。今の国は段々衰えてきて、大変なことが起きようとしてるから、皆さん頑張ったとしても、どうにもならないかもしれないよ」
「それはどうしたってことなの?」
「私が知事と一緒に天帝に挨拶に行った時、偉い人たちが数年後に戦争が起きて、長江の南と北で30万人以上が殺されることになるって言ってたよ。その時になったら、自分から良いことをしたり、優しいことをしたり、忠義を尽くしたりしてる人以外は助かれないと思うし、一般人は天から守ってもらえないから、この大変な目に遭うことになると思うよ。でも、もう運命として決まってるから、どうしようもないんだけどね。どう思う?」
「俺らには関係ねぇ」
「よくわかんねぇ」
「どうでもいいよ」

原文 (会話文抽出)

「―県の―は、米を二千石持っておったが、この頃の旱魃と虫害で、米価があがり、隣境から糴がこなくなって、餓死人が出来たので、倉を開いて賑わしたが、元価を取りて利益を取らず、また粥を焚いて貧民を済ったので、それがために命をつないでいる者が多いといって、さっき県神から本司に上申してきたから、府君に呈したが、もう天庭に奏文して、寿を三紀延べて、禄を万鐘賜うた」
「―村の―氏は、姑に孝行で、その夫が外へ往っていて、姑が重い病気に罹り、医巫も効がないので、斎戒沐浴して天に祈り、願わくば身をもって代りたいといって、股を割いて進めたから、病気が癒った、で、さっき天符がさがって、―氏の孝行が天地に通じて、誠を鬼神に格したから、貴人になる児を二人生まして、皆君の禄を食んで、家の名をあげ、終に大夫の命婦としてこれに報いるということになったので、府君が本司にくだして、今已に之を福籍に著わした」
「―姓―官は、爵位が崇く、俸禄が厚いに係わらず、国に報ぜんことを思わないで、惟だ貪饕を務めて、鈔金三百錠を受け、法を枉げて裁判をし、銀五百両を取って、理を非に枉げて良民を害したから、府君が上界に奏して、罪を加えようとしておるが、彼は先世に陰徳があって、姑く不義の富貴を享けておることになっておるから、数年の時間を貸して、滅族の禍に罹らしめることにして、今、もう命を奉って、悪簿に記したところだ」
「―郷―は、田が数十頃あるが、貪縦で厭くことがなく、しきりに隣接地を自分の物にしているが、その手段が甚だよくない、ひとりぽっちで援けのない者を欺いて、賤く買い、中にはその定価を払わないで、相手を忿らして死なしておる者もあるので、冥府から本司に知らしてきて、捉えて獄に入れたが、もう已に牛となって、隣の家に生れて、その負うところを弁償さしておる」
「諸君はそれぞれ職を守って、善を賞し、悪を罰して、それが実に至れり尽せりというべきであるが、しかし、天地の運行には数があり、生霊の厄会には期がある、元の国統が漸く衰えてきて、大難が将に作ろうとしている、諸君が善く理めるといっても、これはどうすることもできない」
「それはどうしたことだ」
「吾が今度、府君に従うて、天帝の許へ朝した時、聖者達が数年の後に戦乱が起って、巨河の南、長江の北で、人民が三十余万殺戮せられるということを話しあっていたが、この時になっては、自ら善を積み、仁を累ね、忠孝純至の者でないかぎり、とても免れることはできない、まして普通一般の人民では天の佑が寡いから、この塗炭に当ることがどうしてできよう、しかし、これは運数が已に定まっているから、これを逃れることはできないが、諸君はどう思う」
「それは吾々の知ったことじゃない」
「それは判らない」
「吾々はそんなことは知らない」


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