田中貢太郎 『牡丹燈記』 「お前さんは、大変なことをやってるが、知っ…

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青空文庫図書カード: 田中貢太郎 『牡丹燈記』

現代語化

「お前何やってんだ。自覚あんのかよ?」
「何だろう。よくわかんないんだけど」
「わかんねぇわけねぇだろ。お前、ヤバいことしてんだ、気付いてねぇのかよ」
「なんだよ」
「なんだもなにもねぇよ。お前、でっかい骸骨とイチャイチャしてるじゃねぇか」
「骸骨、骸骨って、あれのこと?」
「笑ってんじゃねぇよ。お前、ヤバい骸骨と何しよっていうんだ。お前、悪霊に取り憑かれてんだよ」
「ホント?」
「嘘つくメリットあんのか。お前、毎晩おかしなこと言ってっから、最初は寝言だと思ってたんだ。でも、変だから、昨夜あっちの壁の穴から覗いてみたんだ。お前、悪霊に命奪われそうになってたよ」
「ランタンの晩に知り合って、それ以来毎晩泊まりに来てたんだけど、悪霊か?」
「悪霊も悪霊、相当やばい悪霊だ」
「奉化の人で、親父が州の役人だったって言ってたよ。湖西に女中と二人で住んでると。ホントかなあ」
「ホントもクソもないよ、悪霊だ。俺がこんなこと言っても信じられねぇなら、湖西行って調べてみりゃいいじゃねぇか。そんな奴いねぇよ、きっと」
「そうかな。確かにレイケイって名前だったけど、じゃあ行ってみるよ」

原文 (会話文抽出)

「お前さんは、大変なことをやってるが、知ってやってるかな」
「さあ、なんだろう、私には判らないが」
「判らないことがあるものか、お前さんは、大変なことをやってる、気が注かないことはないだろう」
「なんだね」
「なんだもないものだ、お前さんは、おっかない骸骨と抱きあってるじゃないか」
「骸骨、骸骨って、あれかね」
「笑いごとじゃないよ、お前さん、おっかない骸骨と、何をしようというのだ、お前さんは、邪鬼に魅いられてるのだよ」
「ほんとうかね」
「嘘を言って何になる、わしはお前さんが、毎晩のようにへんなことを言うから、初めは寝言だろうと思ってたが、それでも不思議だから、昨夜、あの壁の破れから覗いて見たのだ、お前さんは、邪鬼に生命を取られようとしてるのだ」
「観燈の晩に知りあって、それから毎晩泊りにきてたが、邪鬼だろうか」
「邪鬼も邪鬼、大変な邪鬼だ」
「奉化の者で、お父さんは州判をしてたと言ったよ、湖西に婢と二人で暮してると言うのだ、そうかなあ」
「そうとも、邪鬼だよ、わしがこんなに言っても、ほんとうと思えないなら、湖西へ行って調べてみるがいいじゃないか、きっとそんな者はいないよ」
「そうかなあ、たしかに麗卿と言ってたが、じゃ行って調べてみようか」


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