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青空文庫図書カード: 田中貢太郎 『令狐生冥夢録』
現代語化
「あいつは人の悪口を言うのが好きなんです。ただ罰しても言うこと聞かないんで、自白書を取って罪を明らかにしたほうがいいと思います。そしたら文句言えませんよ」
「よし、自白させよう」
「ここに事実を書いてくれ」
「私は罪なんか犯してないから、書くことありません」
「罪がないだと？『金を払えば牢から出られる、官民の門はどこでも通れる』ってのは誰の句だ？」
原文 (会話文抽出)
「あの男は、人の陰私を訐くことを好む者でございます、ただ罪を加えても伏しませんから、供書を取って、犯している罪を明かにするがよろしかろうと思います、そうすればとやかくいう詞がないと思われます」
「よし、それでは供をさせよう」
「これに事実を書くがよいだろう」
「私は、犯した罪がありませんから、書くことがありません」
「その方は罪がないというが、あの一陌の金銭便ち魂を返す、公私随所に門を通ずべしは、何人の句だ」
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