田中貢太郎 『金鳳釵記』 「今、何か御馳走が出来るが、それまで話をし…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 田中貢太郎 『金鳳釵記』

現代語化

「お、今何か旨いの作るから、それまで話そう。親父も母親も元気か?」
「実は、親父も母親もいなくなっちゃいまして」
「は? 親父も母親も死んだ?」
「はい、親父は北京で税関の仕事をしてたんですけど、3年前に亡くなりました。母親はそっから2、3年前に亡くなってます」
「そっか、知らなかった。なら大変だなあ。でも来てくれてよかったよ。落ち込むなよ」
「もうそれも諦めてます」
「そうだよ、諦めるしかない。でも、もう一つ諦めてもらわなきゃいけないことがあるんだ」
「え?」
「お前と婚約してたシンちゃんは病気で死んじゃったんだ」
「え、シンちゃんが」
「お前の気持ちは分かるけど、仕方がないことなんだ。諦めてくれ。半年くらい苦しんで、2カ月前に亡くなったんだ。お前から婚約のしるしに預かってた鳳凰の髪飾りは、棺桶に入れたよ。ずっとお前からの便りがなくて、嫁入り時期を逃しそうだから、他から婿をもらうって言ってたけど、お前の親父さんとの約束があるから聞き入れなかったんだ。シンちゃんも他に嫁ぐことはなくて、お前のことばっかり言ってたんだ。19だったよ」
「申し訳ありません。親父も僕も、もっと早く迎えに行くべきだったんですけど、母親が亡くなって喪が明けてからって思ったんですけど、また親父が亡くなって、また喪に服しまして。喪が明けたらすぐに来ましたけど、申し訳ありません」
「いや、こういう運命だったんだろう。でもシンちゃんが亡くなっても、私はお前の義父だよ。ずっと助け合っていこう。それに、お前も親がいないんだから、うちで暮らせばいい」
「はい」
「じゃあ、シンちゃんの位牌にお前の帰ってきたことを知らせよう」

原文 (会話文抽出)

「今、何か御馳走が出来るが、それまで話をしよう、お父さんもお母さんも、皆御無事だろう」
「実は、その父も、母も、歿くなりまして」
「なに、お父さんも、お母さんも歿くなった」
「そうです、父は宣徳府の理官を勤めておりましたが、三年前に歿くなりました、母の方は、父よりも二三年前に歿くなりました」
「そうか、それは知らなかった、それでは、どこもかしこも不幸だらけじゃ、しかし、よく帰ってきてくれた、力を落してはいかんよ」
「いや、もう私も諦めております」
「そうじゃ、諦めなくちゃいかん、諦めるに就いては、まだ一つ諦めて貰わなければならないことがある」
「え」
「あんたと許嫁になっていた興娘も、病気でなくなったのじゃ」
「え、興娘さんが」
「あんたには気のどくだが、しかたがないことじゃ、諦めておくれ、半年ほど患ってて、二ヶ月前に歿くなったのじゃ、あんたの処から許嫁の証に貰っていた鳳凰の釵は、あれは棺の中へ入れてやった。長い間あんたの方から便りがないものだから、妻は嫁入りの時期を失うから、他から婿を取ると言ったが、わしは、あんたのお父さんと約束があるから、それには耳を傾けなかった、あれもまた決して、他へ往こうとせずに、あんたのことを言い言い死んで往ったのじゃ、あれは十九じゃ」
「申しわけがありません、父なり私なりが、早く迎えにあがるはずでしたが、母が歿くなりましたので、その喪でも明けたらと思っておりますと、また父が歿くなりましたので、またまた喪に籠りまして、喪が明けるなり急いで参りましたが、申しわけがありません」
「いや、こうなるのも運命じゃ、しかし、あれは歿くなっても、わしはやっぱりあんたの婦翁じゃ、いつまでも助けあって暮そう、それにあんたも、もうお父さんもお母さんもないから、わしの家にいるがいい」
「はい」
「では、あれの位牌に、あんたの帰ったことを知らしてやろう」


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