田中貢太郎 『断橋奇聞』 「お嬢さん、ちょっとお耳に入れたいことがご…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 田中貢太郎 『断橋奇聞』

現代語化

「お嬢さん、ちょっと話があるんだけど、聞いてくれる?」
「何々?いいわよ。ばあちゃんが言うなら」
「じゃ言うけどさ、お嬢さん、昨日、ここから池のそばに立ってた人、見た?」
「見てない」
「でもお嬢さん、その人が今日私のとこに来て、昨日お嬢さんがここにいたのを見て、しかもお嬢さんから話しかけられたって言ってたよ。すんごいお嬢さんのこと褒めてた」
「あの人、蘇州の人で、文さんって言うんだけど、頭も良くて勉強もできて、性格もバツグンだし、お嬢さんの旦那さんにしても絶対恥ずかしくないと思う」
「あの人は、お嬢さんを見てからずっとお嬢さんのことばっかり考えてて、何度も何度も私のとこに来て、お嬢さんに私の気持ちを伝えてくれって言うの。何か返事してあげてよ。可哀想だよ」
「でも、私、何て言えばいいかわからないよ」
「あの人、今まで結婚したことあるの?」
「ないよ。そんな人だったら絶対私が世話人なんてしないよ。あの人はそんなチャラチャラした人じゃない。性格も顔も超いいし、お嬢さんとぴったりだから、私が引き合わせるよ。任せてくれる?」
「じゃあ、あの人に教えて、喜ばせてあげよう」
「ばあちゃん、このこと、誰にも言わないでね」
「言うわけないでしょ」

原文 (会話文抽出)

「お嬢さん、ちょっとお耳に入れたいことがございますが、お話ししてもよろしゅうございましょうか」
「どんなこと、いいわよ、お婆さんの言うことなら」
「では申しますがね、お嬢さん、あなたは昨日、ここからお池の傍へ来て立ってた方を、御覧になりはしませんでしたか」
「見ないわ」
「でもお嬢さん、その方が今日私の処へまいりまして、昨日お嬢さんがここにいらっしゃるのを見かけて、そのうえお嬢さんからお声をかけられたと言って、ひどくお嬢さんの御標格の佳いことをほめておりましたよ」
「あの方は、蘇州の方で、文という方ですよ、才智があって学問があって、人品はあんなりっぱな方ですから、お嬢さんのお婿さんにしても、恥かしくないと思いますが」
「あの方は、お嬢さんにお眼にかかってから、お嬢さんのことを思いつめて、何回も何回も私の処へまいりまして、お嬢さんに、私の思っていることをつたえてくれと申します、どうかお嬢さん、何か返事をしてやってくださいましよ、ほんとにお気のどくですよ」
「でも、私、どう言っていいか判らないのですもの」
「あの方は、これまで結婚したことがあるのでしょうか」
「ありません、そんな方なら決して私が媒人はいたしません、あの方はそんな軽薄な方ではありません、ほんとにあの方は、人品と申し御標格と申し、お嬢さんとは似あいの御夫婦でございますから、お取り持ちいたすのでございます、私にまかしていただけますまいか」
「では、あの方に知らして、喜ばしてあげましょう」
「お婆さんは、このことは、何人にも言っちゃ、厭よ」
「言うものですか」


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