GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 田中貢太郎 『断橋奇聞』
現代語化
「ああ、それか。昨日ばあちゃんが話してた、劉さんの姉ちゃんだよ」
「そいつはちょっといやだなぁ。他の人ならなんとかなるけど、劉さんのとこは旦那さんが頑固一徹で、杭州の役人連中が次々申し込んでも断ってるんだって。しかもあんたは旅の人でしょ？絶対無理だよ」
「じゃ、コレ返すよ。できないから」
「ま、待って。まだ話があるかなと思ってたんだ。聞いてからにしてくれよ」
「ばあちゃん、俺がこんなこと言うのって、娘さんを知らないわけじゃないんだ。昨日ここ来る前にその家の中に入って庭見てたら、娘さんが二階にいて、俺見て『あら、かっこいい』って言うの聞いたんだ。だから娘さんも俺のこと知ってるはずだよ。こっそり娘さんに会って、そんなことあったかって確かめて、ついでに俺も娘さんのこと気にしてるって伝えてよ。そしたら夕方また来るから」
「えぇ、本当なの？お嬢様が旦那さんのこと褒めてたなんて」
「本当だよ」
「本当なら娘さんに伝えてあげてもいいけど、嘘だったらあんた二度と娘さんに会えなくなるよ」
「大丈夫だよ。頼んだよ」
「じゃ、行ってみようか。でも、こういうのは縁のものだから、縁がなかったらしゃあないと思っといてね」
「縁がなければしょうがないさ」
原文 (会話文抽出)
「相公の頼みたいというのは、どこの姐姐さんですか」
「それかね、それは、昨日お婆さんが話してくれた、あの、劉さんの姐姐さんだよ」
「そいつは相公、だめですよ、他の姐姐さんなら、なんとか話を纏めますが、劉さんの方ですと、劉の相公はいっこくですから、杭州の城内の武官の中で、だんだん申しこんでおりますが、しょうちしないのです、それに旦那は旅の方でしょう、とてもだめですよ」
「これはお返しします、とてもできませんから」
「ま、まってください、まだ一つお話しすることがあるから、それを訊いてからにしてください」
「お婆さん、私がこんなことをいうのは、お嬢さんを知らずに言ってるんじゃないのです、昨日ここへくる前に、あの家の中へ往って、庭を見物していると、お嬢さんが楼の上にいて、私を見て、おや綺麗な方だわと言ったのです、だからお嬢さんも私を知ってるはずです、そっとお嬢さんに遇って、そんなことがあったかないかを確かめたうえで、私もお嬢さんのことを思っているということを言ってください、また晩方に来ますから」
「そりゃ、ほんとでしょうね、お嬢さんが相公のことをほめたのは」
「ほんとですとも」
「ほんとならお嬢さんに言ってもいいのですが、いいかげんのことだったら、私が二度とお嬢さんにお眼にかかることができないのですからね」
「そりゃ大丈夫ですよ、どうかお嬢さんに取りついでください」
「では往ってあげてもいいが、こんなことは縁ですから、縁がなかったらできないことだと思ってくださいよ」
「縁がなければしかたがないですとも」