田中貢太郎 『断橋奇聞』 「お婆さんは、何姓ですか」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 田中貢太郎 『断橋奇聞』

現代語化

「おばあさんは、何姓ですか?」
「今は施姓ですけど、実家は李姓ですよ。亡くなった夫が天に召されてからもう10年になります。男の子がいないものですから、今こうしているんです。亡くなった夫の兄弟の順番が10番目だったので、私は施十娘って呼ばれているんです。あなたは?」
「私は姑蘇の者で、文って申します。この西湖の景色を見に来ました」
「じゃあ、風流人さんですね」
「おばあさん、この隣に大きな門構えの家がありますけど、あれは何家ですか?」
「あれは劉万戸という武官の家ですよ。そんな立派なお家ですけど、男の子がいなくて、娘が一人きりなんです。秀英さんっておっしゃって、今年で18になります。まだお嫁には行ってないんですよ」
「18にもなって嫁に行かないなんて、どういうわけなんですか?そんな名家なのに」
「それはですね、お嬢さんが美人で、頭もいいんです。詩や文も上手で。お父さんがとてもかわいがっていて、高官になった人を養子にしようと探してるんです。でも、条件に当てはまる人がいないので、まだお嫁にに行けてないんです。どんどん年を取っていくので、かわいそうですよ」
「おばあさんは、そのお嬢さんを知ってるんですか?」
「お隣同士なので、いつも行き来していますし、花粉とかを買っていただくので、お嬢さんのことはよく知っていますよ」
「そうですか」

原文 (会話文抽出)

「お婆さんは、何姓ですか」
「今は施姓ですが、母方のほうは李姓ですよ、所天が没くなってから十年になりますが、男の子がないものだから、今にこうしております。私の所天の排行が十に当るから、人が私を施十娘というのですよ、あなたは」
「私は姑蘇の者で、文というのです、この西湖の山水を見にきて遊んでいるのですよ」
「では、あなたは風流の方ですね」
「お婆さん、この隣に大きな門の家がありますね、あれはどうした家ですか」
「ありゃあ、劉万戸という武官の家ですよ、あんな大家だが、男のお子がなくて、お嬢さんが一人あるっきりですよ、秀英さんとおっしゃってね、十八になります、まだお嫁いりなさらないのですよ」
「十八にもなって嫁にゆかないとは、どういうわけでしょう、そんな家で」
「そりゃあね、お嬢さんが御標格が佳いうえに、発明で、詩文も上手におできになるから、相公がひどく可愛がって、高官に昇った方を養子にしようとしていらっしゃるものだから、それに当る人がのうて、まだそのままになっておりますが、だんだんお歳がいくので、お可哀そうですよ」
「お婆さんは、そのお嬢さんを知っているのですか」
「お隣ではあるし、平生出入して、花粉などを買っていただくから、お嬢さんはよく知っておりますよ」
「そうですか」


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