田中貢太郎 『雷峯塔物語』 「私は、あなたに、この身を許しているじゃあ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 田中貢太郎 『雷峯塔物語』

現代語化

「あなたに身を任せているんですから、私を疑うなんておかしいじゃないですか。お金のことですが、よく考えるとあの銀は前の夫のものだったんです。私は何も知らなくてあなたにあげて、こんな騒ぎになってしまったんです。それを言い訳したくて来ました」
「臨安府の捕手が来たとき、あなたはベッドにいて、大きな音がすると同時にいなくなりましたよね。あれはどういうことですか?おかしいじゃないですか」
「あれは召使に頼んで壁を叩かせたんです。その音で捕手が慌てて近づけないうちに逃げ出して、華蔵寺前の娘の家に隠れていました。あなたは私のことを何も考えてくれなくて、逆に私を妖怪みたいにあつかうんですもの。でもあなたの疑いが晴れればいいんです。これで失礼します」
「まあ、遠くから来てくださったんですから、何日か休んで、もっとお話をしたらどうですか?」
「奥さん、そこまで親切に言ってくださるなら、もうちょっと考えてみてもいいでしょうか?」
「でも、あなたはもう私のことなんか考えてないんですもの」
「もう事情が全部分かりましたから、許宣さんもいつまでも誤解はしませんよ」

原文 (会話文抽出)

「私は、あなたに、この身を許しているじゃありませんか、どうして、あなたを悪いようにいたしましょう、あの銀は、今考えてみますと、私の先の夫です、私はすこしも知らないものですから、あなたにさしあげてあんなことになりました、私はそれを言いたくてあがりました」
「臨安府の捕卒が往った時、あなたは牀の上にいて、大きな音がするとともに、いなくなったじゃありませんか、あれはどうしたのです、おかしいじゃないか」
「あれは婢に言いつけて、板壁を叩かしたのですよ、その音で捕卒がまごまごしてよりつかなかったから、その隙に逃げて、華蔵寺前の姨娘の家に隠れていたのです、あなたはちっとも、私のことなんか考えてくださらないで、あべこべに私を妖怪あつかいにするのですもの、でも私はあなたの疑いさえ解けるならいいのです、これで失礼いたします」
「まあ、遠い処をいらしたのですから、二三日お休みになって、もっとお話しするがいいじゃありませんか」
「奥さん、御親切にあんなに言ってくださいますから、もすこしお考えなすったら如何です」
「でも、あの方は、もう私のことなんか、思ってくださらないのですもの」
「もうすっかり事情も判ったのですから、許宣さんだって、いつまでも判らないことは言わないですよ」


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