GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 田中貢太郎 『狼の怪』
現代語化
「ごめんなさい、悪かったです」
「あなたはどなたですか?」
「この、すぐ前の谷にいるものです」
「じゃあ、何しに来たんですか?」
「月がきれいだったので、ふらふらと歩いてきました」
「私はあなたの腕をつかんだのか分からないけど、夢心地で喉をなめられたように感じます。私の喉に何かしましたか?」
「ごめんなさい、いたずらしました」
「そうですか。私は獣か何かが来て舐めたと思ったんです。突然手を掴んだので、びっくりしたんでしょう」
「心配してると思うので、送りましょう」
「ありがとうございます」
「送りましょう。私も猟で帰れなくて、仕方なくここに寝ていますが、ぐっすり眠れないので、あなたのお家の軒を借りましょう」
「じゃあ、お願いします」
「まあ、こんな所に何してるんですか?」
「ここでこの方と会ったんです」
「それで?」
「会ってどうしたんですか?また何かいたずらしたんじゃないですか?」
「また何かいたずらしたんでしょうね」
「本当よ、いたずらしたのよ。この人が寝ているから、喉のあたりをさすったのよ」
「ですよね。本当に困りますよ、いたずらばっかりして」
「お嬢さんはまだ寝てるので、ごめんなさい」
「いえいえ、どういたしまして。私は獣が来て舐めたと思ったので、払い除けようとして、何かをつかんだら、それがお嬢さんの腕でした。私が寝ぼけていて、お嬢さんをびっくりさせちゃって、ごめんなさい」
「どういたしまして。本当に寝相が悪くて困るんです」
「私がいいやつだからいいようなものの、他の人だったら、どうなっていたか分かりませんよ。もう反省して、こんなことはしないでくださいね」
「この方、送ってくれるって」
「それは、申し訳ありません」
「お嬢さんは私が送りますが、あなたはこれからどうされますか?もしよろしければ、うちにお泊まりになりませんか?」
「いえ、さっきもお嬢さんに頼んでいたところです。私はこの下の村の猟師ですが、獣を追いかけていたら日が暮れてしまって、仕方なくここで寝てたんです。お嬢さんを送り届けたら、軒を借りようと思っていました」
「じゃあ、どうぞ。別に構いませんが、うちはお嬢さんと私の二人だけで、他に誰もいませんから」
原文 (会話文抽出)
「赦してください、赦してください」
「赦してください、悪うございました」
「あなたは、どうした方です」
「この、すぐ、前方の谷陰にいる者でございます」
「では、ここへ、何しにきました」
「月が綺麗なものでございますから、つい、ふらふらと歩いてきました」
「私は、貴女の手を、どうした拍子に掴んだのか判らないが、なんだか夢心地に、咽喉元を嘗められたように思います、私の咽喉をどうかしたのですか」
「どうも悪うございました、つい悪戯をいたしました」
「そうですか、私は、また、獣か何かが来て、嘗めたかと思いました、不意に手を掴んだので、びっくりしたのでしょう」
「皆さんが心配してるかもわかりません、送ってあげましょう」
「有難うございます」
「送ってあげましょう、私も猟にきて帰れないので、しかたなしにここに寝ておりますものの、ゆっくり睡れないのですから、貴女の家の簷の下でも拝借しましょう」
「では、お願いいたします」
「まあ、こんな処に、何をしていらっしゃるのです」
「ここでこの方にお目にかかってね」
「それでね」
「お目にかかってどうしました、また何か、悪戯をなされたではありませんか」
「何かまたきっと悪戯をなされたでしょう」
「ほんとうは悪戯したのよ、この方が睡っていらっしゃるから、咽喉の辺をさすったのよ」
「そうでございましょう、ほんとに貴女は、悪戯ばかしして困りますよ」
「お嬢さんは、まだねんねえでございますから、ほんとうにすみません」
「いや、どういたしまして、私は獣でも来て嘗めたと思いましたから、払い除ける拍子に、何か手端に触りましたから、一生懸命に掴んで見ますと、それがお嬢さんの手でした、私こそ寝ぼけてて、お嬢さんを甚い目に遭わして、お気の毒ですよ」
「どういたしまして、ほんとにお嬢さんは、ねんねえで困ります」
「これがいい方だからかまわないようなものの、他の方であったら、どんな目に遭わされるかも判りませんよ、もうこれに懲りて、こんなことをなされてはいけませんよ」
「でね、この方が、送ってくださると言ってらしたところよ」
「それは、どうもすみません」
「お嬢さんは、私がもうお伴れいたしますが、貴方様は、これからどうなされます、もし、おかまいがないなら、私の方へお泊りなされては如何でございます」
「いや、それは、今もお嬢さんにお願いしてたところです、私はこの下の村の猟師ですが、獣を追駈けてるうちに、日が暮れてしまって、しかたなしに寝てた者ですから、お嬢さんをお送りして、簷の下でも拝借しようと思っておりました」
「それでは、どうぞ、何もおかまいいたしませんが、私の方はお嬢さんと二人きりで他に何人もおりませんから」