太宰治 『故郷』 「ありがとうございました。おかげさまでした…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『故郷』

現代語化

「ありがとうございました。おかげさまでした。」
「私たちは今夜このまま金木に泊まってもいいんですか?」
「それは構いませんよ。」
「なにせ、お母さんがあんなに具合が悪いんですから。」
「じゃ私たちはもう二、三日金木の家に泊めてもらって、――それは図々しいでしょうか。」
「お母さんの容態次第ですね。とにかく明日電話で打ち合わせましょう。」
「北さんは?」
「明日東京に帰ります。」
「大変ですね。去年の夏も北さんはすぐにお帰りになって、今年は青森の近くの温泉でもご案内しようと私たちは準備してきたんですけど。」
「いや、お母さんがあんなに悪いのに、温泉どころじゃありません。実際、こんなに容態が悪いとは思わなかった。意外でした。あなたにお支払いいただいた汽車賃は後で計算してお返ししますから。」
「冗談じゃない。お帰りの切符も私が買わないといけません。そんなご心配はよしてください。」
「いや、はっきり計算してみましょう。中畑さんのところにあずけておいたあなたたちの荷物も、明日早速中畑さんに頼んで金木のお宅に届けさせることにしましょう。もうそれで私の用事は終わりです。」
「停車場はこちらでしたね?もうお見送りはいいですよ。ほんとに、もう。」
「北さん!」
「何か兄さんに言われましたか?」
「いいえ。」
「そんな心配はもうなさらなくていいですよ。私は今夜もいい気分でした。文治さんと英治さんとあなたと、立派な子どもたちが三人並んで座っているところを見たら、涙が出そうになるほど嬉しかった。もう私は何も要りません。満足です。私は最初から一文の報酬だって望んでいなかった。それはあなたもご存じでしょう?私はただあなたたち兄弟三人を並べて座らせてみたかったのです。いい気分です。満足です。シュウジさんもこれからしっかりやってください。私たち老人はそろそろ引退してもいい頃です。」

原文 (会話文抽出)

「ありがとうございました。おかげさまでした。」
「僕たちは今晩、このまま金木へ泊ってもかまわないのですか?」
「それあ構わないでしょう。」
「なにせ、お母さんがあんなにお悪いのですから。」
「じゃ私たちは、もう二、三日、金木の家へ泊めてもらって、――それは図々しいでしょうか。」
「お母さんの容態に依りますな。とにかく、あした電話で打ち合せましょう。」
「北さんは?」
「あした東京へ帰ります。」
「たいへんですね。去年の夏も、北さんは、すぐにお帰りになったし、ことしこそ、青森の近くの温泉にでも御案内しようと、私たちは準備して来たのですけど。」
「いや、お母さんがあんなに悪いのに、温泉どころじゃありません。じっさい、こんなに容態がお悪くなっているとは思わなかった。案外でした。あなたに払っていただいた汽車賃は、あとで計算しておかえし致しますから。」
「冗談じゃない。お帰りの切符も私が買わなければならないところです。そんな御心配は、よして下さい。」
「いや、はっきり計算してみましょう。中畑さんのところにあずけて置いたあなた達の荷物も、あした早速、中畑さんにたのんで金木のお家へとどけさせる事にしましょう。もう、それで私の用事は無い。」
「停車場はこっちでしたね? もう、お見送りは結構ですよ。本当に、もう。」
「北さん!」
「何か兄さんに言われましたか?」
「いいえ。」
「そんな心配は、もう、なさらないほうがいい。私は今夜は、いい気持でした。文治さんと英治さんとあなたと、立派な子供が三人ならんで坐っているところを見たら、涙が出るほど、うれしかった。もう私は、何も要らない。満足です。私は、はじめから一文の報酬だって望んでいなかった。それは、あなただってご存じでしょう? 私は、ただ、あなた達兄弟三人を並べて坐らせて見たかったのです。いい気持です。満足です。修治さんも、まあ、これからしっかりおやりなさい。私たち老人は、そろそろひっこんでいい頃です。」


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