太宰治 『故郷』 「こんどは、ゆっくりして行くんでしょう?」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『故郷』

現代語化

「今度はゆっくりしていきますか?」
「どうなるでしょうね。去年みたいに、やっぱり二、三時間で帰ってきちゃうことになるんじゃないでしょうか。北さんのお話では、それがいいみたいでした。僕は何をしても北さんの言う通りにするつもりですから。」
「でも、お母さんがこんなに具合が悪いのに、置き去りにして帰れますか。」
「それは後ほど北さんと相談して、――」
「そんなに北さんに頼らなくてもいいんじゃないですか。」
「そうもいかないよ。北さんには今までずいぶんお世話になってるんだから。」
「それはそうでしょう。でも、北さんだって、まさか、――」
「いや、だから、北さんに相談してみようというんです。北さんの言うとおりにしてれば間違いないのです。北さんはまだ兄さんと二階で話してるみたいだけど、何か揉めてるんじゃないでしょうか。僕たち親子三人、許しもなく乗り込んじゃって、――」
「そんな心配は要らないでしょう。英治さん(次兄の名前)だって、あなたにすぐ来いって速達を出したそうですよ。」
「それはいつですか?僕たち見てないですけど。」
「あら。私たちはその速達を見ておいでになったものと思って、――」
「それはまずかったな。行き違いになっちゃったんですね。これはまずい。妙に北さんが出しゃばったみたいになっちゃった。」
「大丈夫ですよ。一日でも早く駆けつけたほうがいいんですから。」<ctrl100>

原文 (会話文抽出)

「こんどは、ゆっくりして行くんでしょう?」
「さあ、どうだか。去年の夏みたいに、やっぱり二、三時間で、おいとまするような事になるんじゃないかな。北さんのお話では、それがいいという事でした。僕は、なんでも、北さんの言うとおりにしようと思っているのですから。」
「でも、こんなにお母さんが悪いのに、見捨てて帰る事が出来ますか。」
「いずれ、それは、北さんと相談して、――」
「何もそんなに、北さんにこだわる事は無いでしょう。」
「そうもいかない。北さんには、僕は今まで、ずいぶん世話になっているんだから。」
「それは、まあ、そうでしょう。でも、北さんだって、まさか、――」
「いや、だから、北さんに相談してみるというのです。北さんの指図に従っていると間違いないのです。北さんは、まだ兄さんと二階で話をしているようですが、何か、ややこしい事でも起っているんじゃないでしょうか。私たち親子三人、ゆるしも無く、のこのこ乗り込んで、――」
「そんな心配は要らないでしょう。英治さん(次兄の名)だって、あなたにすぐ来いって速達を出したそうじゃないの。」
「それは、いつですか? 僕たちは見ませんでしたよ。」
「おや。私たちは、また、その速達を見て、おいでになったものとばかり、――」
「そいつあ、まずかったな。行きちがいになったのですね。そいつあ、まずい。妙に北さんが出しゃばったみたいな形になっちゃった。」
「まずい事は無いでしょう。一日でも早く、駈けつけたほうがいいんですもの。」


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