太宰治 『故郷』 「しかし、大丈夫ですか? 女房や子供などを…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『故郷』

現代語化

「でも大丈夫ですか?妻や子供を連れて行って、玄関払いでも食らったら、見てられないですからね。」
「そんなことはありません。」
「去年の夏はどうでしたか?」
「その後でお二人とも文治さん(長兄の名前)に何か言われなかったですか?北さん、どうですか?」
「それは兄さんの立場として、」
「ご親戚の前もあるし、よく来たとは言えません。でも私が連れて行くなら大丈夫だと思います。去年の夏のことにしても、その後東京で兄さんに会ったら、兄さんは私に一言、「北君は人が悪いなあ」と言っただけですよ。怒ってはいませんよ。」
「そうですか。中畑さんのほうはどうでしたか?何か兄さんに言われなかったですか?」
「いいえ。」
「私には一言も何もおっしゃいませんでした。今まで私があなたに何かお世話でもすると、後から必ずちょっとした皮肉をおっしゃっていたのですが、去年の夏のことだけは、兄さんは何もおっしゃいませんでした。」
「そうですか。」
「あなた方に迷惑がかからないのであれば、私は連れて行っていただきたいのです。母に会いたくないわけじゃないし、それに去年の夏は文治兄さんに会えなかったけれど、今度こそ会いたい。連れて行ってくださるととてもありがたいのですが、妻のほうはどうですか。初めて亭主の親戚に会うわけですから、女は着物だのなんだの、面倒なこともあるでしょうし、少し大変がるかもしれません。そこを北さんから一つ妻に説得していただけませんか。私から言うと、きっとぐだぐだ言いますから。」
「喜んでお引き受けします。」
「いつにしますか?」<ctrl100>

原文 (会話文抽出)

「しかし、大丈夫ですか? 女房や子供などを連れていって、玄関払いを食らわされたら、目もあてられないからな。」
「そんな事は無い。」
「去年の夏は、どうだったのですか?」
「あのあとで、お二人とも文治さん(長兄の名)に何か言われはしなかったですか? 北さん、どうですか?」
「それあ、兄さんの立場として、」
「御親戚のかた達の手前もあるし、よく来たとは言えません。けれども、私が連れて行くんだったら、大丈夫だと思うのです。去年の夏の事も、あとで兄さんと東京でお逢いしたら、兄さんは私にただ一こと、北君は人が悪いなあ、とそれだけ言っただけです。怒ってなんかいやしません。」
「そうですか。中畑さんのほうは、どうでしたか? 何か兄さんに言われやしませんでしたか?」
「いいえ。」
「私には一ことも、なんにも、おっしゃいませんでした。いま迄は私が、あなたに何か世話でもすると、あとで必ず、ちょっとした皮肉をおっしゃったものですが、去年の夏の事に限って、なんにも兄さんは、おっしゃいませんでした。」
「そうですか。」
「あなた達にご迷惑がかからない事でしたら、私は連れていってもらいたいのです。母に、逢いたくないわけは無いんだし、また、去年の夏には、文治兄さんに逢うことが出来ませんでしたが、こんどこそ逢いたい。連れていって下さると、私は大いにありがたいのですが、女房のほうはどうですか。こんどはじめて亭主の肉親たちに逢うのですから、女は着物だのなんだの、めんどうな事もあるでしょうし、ちょっと大儀がるかも知れません。そこは北さんから一つ、女房に説いてやって下さい。私から言ったんじゃ、あいつは愚図々々いうにきまっていますから。」
「よろしく、お願い致します。」
「いつになさいますか?」


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