太宰治 『帰去来』 「風向きが変りましたよ。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『帰去来』

現代語化

「風向きが変わったよ。」
「実は、兄さんが東京に来てるんです。」
「なんだ。それじゃこの旅行は意味ないじゃん。」
「いいえ。向こうに行って兄さんに会うのが目的じゃない。お母さんに会えればいいんです。私はそう思います。」
「でも、兄さんの留守に、僕たちが乗り込むのは、なんだか卑怯みたいだけど。」
「そんなことない。私は昨日兄さんに会って、ちょっと話したんです。」
「シュウジさんを向こうに連れて行くって言ったんですか?」
「いいえ、そんなことは言えない。言ったら兄さん、「北君、それは困る」って言うでしょう。内心はどう思ってても、とにかくそう言わなきゃいけない立場です。だから私は昨日会っても何も言いませんよ。言ったらぶち壊しです。ただね、私は東北の方にちょっと用事があって、明日の七時の急行で出発するつもりだけど、ついでに津軽のお宅の方にも寄らせていただくかもしれませんよ、とだけ言ったんです。それでいいんです。兄さんが留守ならかえって都合がいいくらいだ。」
「北さんが青森に遊びに行くって言ったら、兄さん喜んだでしょうね。」
「ええ、お宅に電話してあちこち案内するように言いつけようとおっしゃったんですけど、私は断りました。」

原文 (会話文抽出)

「風向きが変りましたよ。」
「実は、兄さんが東京へ来ているんです。」
「なあんだ。それじゃ、この旅行は意味が無い。」
「いいえ。くにへ行って兄さんに逢うのが目的じゃない。お母さんに逢えたら、いいんだ。私はそう思いますよ。」
「でも、兄さんの留守に、僕たちが乗り込むのは、なんだか卑怯みたいですが。」
「そんな事は無い。私は、ゆうべ兄さんに逢って、ちょっと言って置いたんです。」
「修治をくにへ連れて行くと言ったのですか?」
「いいえ、そんな事は言えない。言ったら兄さんは、北君そりゃ困るとおっしゃるでしょう。内心はどうあっても、とにかく、そうおっしゃらなければならない立場です。だから私は、ゆうべお逢いしても、なんにも言いませんよ。言ったら、ぶちこわしです。ただね、私は東北のほうにちょっと用事があって、あすの七時の急行で出発するつもりだけど、ついでに津軽のお宅のほうへ立寄らせていただくかも知れませんよ、とだけ言って置いたのです。それでいいんです。兄さんが留守なら、かえって都合がいいくらいだ。」
「北さんが、青森へ遊びに行くと言ったら、兄さん喜んだでしょう。」
「ええ、お家のほうへ電話してほうぼう案内するように言いつけようとおっしゃったのですが、私は断りました。」


青空文庫現代語化 Home リスト