太宰治 『正義と微笑』 「だめ、だめ。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『正義と微笑』

現代語化

「だめ、だめ」
「見事に落第です」
「なんだ、ばかに嬉しそうな顔してるじゃないか。悪い事は、ないんだろう」
「いや、だめなんだ。戯曲朗読は0点だった」
「0点?」
「本当かい?」
「人格がだめなんだそうだ。でも、ね、才能は、――」
「何をそんなに、にやにや笑ってるんだ」
「0点をもらって、喜ぶ事はないだろう」
「ところが、あるんだ」
「及第だ」
「絶対に落第じゃない。2、3日中に合格通知が来るよ。だけど、不愉快な劇団だなあ」
「なってないんだ。落第したほうが名誉なくらいだ。僕は合格しても、あの劇団へは、入らないんだ。上杉氏なんかと一緒に勉強するのは、まっぴらです」
「そうだねえ。ちょっと幻滅だねえ」
「どうだい、もう一度斎藤氏のところへ相談に行ってみないか。あんな劇団は、いやだと、進の感じた事を率直に言ってみたらどうだろう。どの劇団も皆あんなものだから、我慢して入れ、と先生が言ったら、仕方が無い。入るさ。それとも他にまた、いい劇団を紹介してくれるかも知れない。とにかく、試験は受けましたという報告だけでもしておいたほうがいい。どうだい?」
「うん」

原文 (会話文抽出)

「だめ、だめ。」
「みごと落第です。」
「なんだ、ばかに嬉しそうな顔をしているじゃないか。だめな事は、ないんだろう。」
「いや、だめなんだ。戯曲朗読は零点だった。」
「零点?」
「本当かい?」
「人格がだめなんだそうだ。でも、ね、才能は、――」
「何をそんなに、にやにや笑っているんだ。」
「零点をもらって、よろこぶ事はないだろう。」
「ところが、あるんだ。」
「及第だ。」
「絶対に落第じゃない。二、三日中に合格通知が来るよ。だけど、不愉快な劇団だなあ。」
「なってないんだ。落第したほうが名誉なくらいだ。僕は合格しても、あの劇団へは、はいらないんだ。上杉氏なんかと一緒に勉強するのは、まっぴらです。」
「そうだねえ。ちょっと幻滅だねえ。」
「どうだい、もういちど斎藤氏のところへ相談に行ってみないか。あんな劇団は、いやだと、進の感じた事を率直に言ってみたらどうだろう。どの劇団も皆あんなものだから、がまんしてはいれ、と先生が言ったら、仕方が無い。はいるさ。それとも他にまた、いい劇団を紹介してくれるかも知れない。とにかく、試験は受けましたという報告だけでもして置いたほうがいい。どうだい?」
「うん。」


青空文庫現代語化 Home リスト