太宰治 『正義と微笑』 「聞きしにまさる傑物だねえ。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『正義と微笑』

現代語化

「聞きしにまさる傑物だねえ」
「おかしいんだよ、きっと」
「いや、そうじゃない。とても、しっかりしてる。世界的な文豪を自認してる人は、それくらいのところがなくちゃいけない」
「でもお前も、よく頑張ったものだねえ。案外図々しいところがある。不屈の精神だが、でも、大成功だ。けがの功名で、お前は、ちょっと好かれたかもしれない」
「バカ言ってら。全然何も話してくれないんだよ。気味が悪かったぜ」
「いや、確かに好かれている。一緒に車に乗せたというのは、ただ事じゃない。思うに、あの女の人が、うまく取りなしてくれたんだね。津田さんの紹介状だって、案外、見えないところで大活躍してるのかもしれない。せっかく書いていただいて、悪口を言うのはいけない。今になって考えると、立派な紹介状のようだった気もする。まず、大成功だ。それじゃ、これから鴎座に電話して研究生募集のことを、聞いてみるんだね」
「だって、鴎座がいいとは言わなかったんだよ」
「悪いとも言わなかったろう?」
「わからない、って言ってた」
「それでいいんだよ。僕には、斎藤氏の気持ちがわかるね。やっぱり苦労人だよ、斎藤氏は。その辺から、まあ、ぼちぼち始めてみたらいいだろうという事なんだよ」
「そうだろうか」
「さあ、これからは、お前が何でも、一人でやってごらん」

原文 (会話文抽出)

「聞きしにまさる傑物だねえ。」
「どうかしているんだよ、きっと。」
「いや、そうじゃない。とても、しっかりしている。世界的な文豪を以て任じている人は、それくらいのところが無くちゃいけない。」
「しかしお前も、よくねばったものだねえ。案外あつかましいところがある。めくら蛇に怯じずの流儀だが、でも、大成功だ。けがの功名で、お前は、ちょっと好感を持たれたかも知れない。」
「馬鹿言ってら。てんで何も話してくれないんだよ。気味が悪かったぜ。」
「いや、たしかに好意を持たれている。一緒に自動車に乗せたというのは、ただ事でない。思うに、あの女のひとが、うまく取りなして置いてくれたんだね。津田さんの紹介状だって、案外、見えないところで大働きをしているのかも知れない。せっかく書いていただいて、悪口を言うのはいけない。いまになって考えると、立派な紹介状のようだった気もする。まず、大成功だ。それじゃ、これから鴎座へ電話を掛けて研究生募集の事を、問い合せて見るんだね。」
「だって、鴎座がいいとは言わなかったんだよ。」
「わるいとも言わなかったろう?」
「わからん、と言ってた。」
「それでいいんだよ。僕には、斎藤氏の気持がわかるね。やっぱり苦労人だよ、斎藤氏は。その辺から、まあ、ぼつぼつ始めてみたらいいだろうという事なんだよ。」
「そうだろうか。」
「さあ、これからは、お前がなんでも、ひとりでやってごらん。」


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