GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 太宰治 『正義と微笑』
現代語化
「僕にはわかんないよ。狂女じゃないかと思うんだけど」
「まさか。それはね、やっぱり女中さんだよ。秘書も兼ねてる女中、っていうところだ。女学校は卒業してるね。だからもう、19、いや20を越えてるかもしれない」
「今度、兄さんが行ったらいい」
「場合によっては、僕が行かなきゃならないかもしれないけど、まだ、その必要はないようだ。お前は、そんなに落ち込んでるけど、今日は全然失敗じゃなかったんだよ。お前にしては大出来だ。5月3日にまた来る、とはっきり言っただけでも大成功だよ。その女の人は、お前に好意を持ってるらしい」
「いや本当か」
「ふつうの玄関払いとは性質が、違うようだ。脈があるよ。お仕事中は面会謝絶と決まってるんだけど、特にお前のために、どうにか取りついであげようと思ったんだけど、奥さんか誰かに邪魔されて、それができなかったんだな」
「きっとそうだよ。だから今度はお前も、その女の人を、睨んだりなんかしないで、もう少し愛想よくしてあげるんだね。ちゃんと挨拶してね」
「しまった! 今日は帽子もとらない」
「そうだろ。帽子も脱がずに、ただ、はたと睨んでたんじゃ、普通だったら、まず交番に連行されるよ。その女の人に理解があったから、助かったんだ。来月の3日には、しっかりやるさ」
原文 (会話文抽出)
「その女は何者かというのが、問題だ。いくつくらいだったね? 綺麗なひとかい?」
「わからんよ僕には。狂女じゃないかと思うんだけど。」
「まさか。それはね、やっぱり女中さんだよ。秘書を兼ねたる女中、というところだ。女学校は卒業してるね。だからもう、十九、いや二十を越えてるかも知れん。」
「こんど、兄さんが行ったらいい。」
「場合に依っては、僕が行かなくちゃならないかも知れないが、まだ、その必要は無いようだ。お前は、そんなにしょげてるけど、きょうは、ちっとも失敗じゃなかったんだよ。お前にしては大出来だ。五月三日にまた来る、とはっきり言って来ただけでも大成功だよ。その女のひとは、お前に好意を持っているらしい。」
「いや本当さ。」
「ふつうの玄関払いとは性質が、ちがうようだ。脈があるよ。お仕事中は面会謝絶と極っているんだけど、特にお前のために、どうにかして取りついであげようと思ったんだが、奥さんか誰かに邪魔されて、それが出来なかったんだな。」
「きっとそうだよ。だからこんどはお前も、その女のひとを、にらんだりなんかしないで、も少しあいそよくしてあげるんだね。ちゃんとお辞儀をしてね。」
「しまった! きょうは帽子もとらない。」
「そうだろ。帽子もぬがずに、ただ、はったと睨んでいたんじゃ、ふつうだったら、まず交番に引渡されるところだ。その女のひとに理解があったから、たすかったのだ。来月の三日には、しっかりやるさ。」