太宰治 『走れメロス』 「市を暴君の手から救うのだ。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『走れメロス』

現代語化

「この街を暴君から救うんだ。」
「お前が?」
「仕方がないんだ。お前には俺の孤独がわかんない。」
「言うな!」
「人の心を疑うのは最低の悪だよ。王様は民の忠誠心すら疑ってるんだ。」
「疑うのが正しい心構えだって、俺に教えてくれたのはお前たちだ。人の心なんて当てにならない。人間はもともと私欲のかたまりだ。信じてはいけない。」
「俺だって平和を望んでるんだ。」
「何のための平和だ。自分の地位を守るためか。」
「罪のない人を殺して何が平和だ。」
「黙れ、下賤なやつ。」
「口ではどんなきれいごとでも言える。俺には人間の腹の底まで見透かせてしまう。お前だってそのうち磔にされたときに泣いて詫びたところで許してくれねえよ。」
「ああ、王様は賢い。自惚れてろよ。俺はちゃんと死ぬ覚悟ができてるのに。命乞いなんて絶対しない。ただ、――」
「ただ、俺に情けをかけるつもりなら、処刑まで三日間猶予をくれ。たった一人の妹に亭主を娶らせてやりたいんだ。三日のうちに村で結婚式を挙げさせて、必ずここに帰ってくる。」
「バカな。」
「とんでもない嘘を言うな。逃がした小鳥が戻ってくるっていうのか?」
「そうです。戻ってくるんです。」
「俺は約束を守る。三日間だけ俺を許してくれ。妹が俺の帰りを待ってるんだ。そんなに俺を信じられないんなら、いいだろう、この街にセリヌンティウスっていう石工がいる。俺の大親友だ。あいつを人質として置いておくよ。俺が逃げ出して、三日目の日暮れまで戻って来なかったら、あいつを絞め殺してくれ。そうしてくれ。」

原文 (会話文抽出)

「市を暴君の手から救うのだ。」
「おまえがか?」
「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」
「言うな!」
「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」
「わしだって、平和を望んでいるのだが。」
「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」
「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」
「だまれ、下賤の者。」
「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、磔になってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ。」
「ああ、王は悧巧だ。自惚れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」
「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」
「ばかな。」
「とんでもない嘘を言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」
「そうです。帰って来るのです。」
「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。」


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