太宰治 『パンドラの匣』 「マア坊は、まだ口紅をつけてるようじゃない…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『パンドラの匣』

現代語化

「マア坊は、まだ口紅をつけてるようじゃないか」
「あれでも、ずいぶん、拭いたり洗ったりして大騒ぎや。一度に改めろ言うても、それぁ無理。若いのやさかい」
「竹さんの働きは、大したものだね」
「前に、場長さんからも、幾度となく御注意があったんや。今日の事務所からの放送を、場長さんもお聞きになって、いい御機嫌やった。今日の放送は誰の発案かね、とおっしゃるさかいな、ひばりの発明や、とうちが申し上げたら、愉快な子ですなあ、ってな、あの笑わない場長さんが、にやにやっと笑い居った」
「僕の発明じゃあないよ」
「同じ事や。ひばりが言わなかったら、うちだって、動きとうはない。すき好んで憎まれ役を買う人なんてあるかいな」
「憎まれたのかね」
「ううん」
「憎まれやしないけどな、うちは、つらかった」
「孔雀の挨拶は、ちょっと僕も、つらかったよ」
「うん。牧田さんな、あのひと自分から挨拶させてと申し込んで来たのや。悪気の無い、いい人や。お化粧が下手らしいな。うちだって、少しは口紅さしてんのやけど、わからんやろ?」
「なあんだ、同罪か」
「わからんくらいなら、いいのや」

原文 (会話文抽出)

「マア坊は、まだ口紅をつけてるようじゃないか。」
「あれでも、ずいぶん、拭いたり洗ったりして大騒ぎや。いちどに改めろ言うても、それぁ無理。若いのやさかい。」
「竹さんの働きは、大したものだね。」
「まえに、場長さんからも、幾度となく御注意があったんや。きょうの事務所からの放送を、場長さんもお聞きになって、いい御機嫌やった。きょうの放送は誰の発案かね、とおっしゃるさかいな、ひばりの発明や、とうちが申し上げたら、愉快な子ですなあ、ってな、あの笑わない場長さんが、にやにやっと笑い居った。」
「僕の発明じゃあないよ。」
「同じ事や。ひばりが言わなかったら、うちだって、動きとうはない。すき好んで憎まれ役を買うひとなんてあるかいな。」
「憎まれたのかね。」
「ううん。」
「憎まれやしないけどな、うちは、つらかった。」
「孔雀の挨拶は、ちょっと僕も、つらかったよ。」
「うん。牧田さんな、あのひと自分から挨拶させてと申し込んで来たのや。悪気の無い、いいひとや。お化粧が下手らしいな。うちだって、少しは口紅さしてんのやけど、わからんやろ?」
「なあんだ、同罪か。」
「わからんくらいなら、いいのや。」


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