GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 太宰治 『パンドラの匣』
現代語化
「進駐軍も、この嵐には、驚いているでしょう」
「いや、なに、それがねえ、」
「問題はその進駐軍なんです。とにかく君、これを読んでみて下さい」
「英語は僕、読めません」
「読めますよ。君たちくらいの中学校を卒業したばかりの年頃が一ばん英語を覚えているものです。僕たちはもう、忘れてしまいました」
「実はね、これは僕の書いた英文なんです。きっと文法の間違いがあるだろうから、君に直してもらいたいんです。読めばわかるだろうが、どうもこの道場の人たちは、僕をよっぽど英語の達人だと勘違いしているらしく、いまにこの道場へアメリカの兵隊が来たら、あるいは僕を通訳として引っ張り出すかも知れないんだ。その時の事を思うと、僕は心配で仕様がないんですよ。察して下さい」
「だって、あなたは本当に英語がよくお出来になるようじゃありませんか」
「冗談じゃない。とてもそんな通訳なんて出来やしないよ。どうも僕は少し調子に乗って、助手たちに英語の披露をしすぎたんだ。これで通訳なんかに引っ張り出されて、僕がどもったりまごついたりしているところを見られたら、あの助手たちが、どんなに僕を軽蔑するか、わかりゃしない。どうも、こんなに困った事は無い。このごろ、それが心配で、夜もよく眠れないくらいなんだ。御賢察にまかせるよ」
原文 (会話文抽出)
「ええ、」
「進駐軍も、この嵐には、おどろいているでしょう。」
「いや、なに、それがねえ、」
「問題はその進駐軍なんです。とにかく君、これを読んでみて下さい。」
「英語は僕、読めません。」
「読めますよ。君たちくらいの中学校から出たての年頃が一ばん英語を覚えているものです。僕たちはもう、忘れてしまいました。」
「実はね、これは僕の書いた英文なんです。きっと文法の間違いがあるだろうから、君に直してもらいたいんです。読めばわかるだろうが、どうもこの道場の人たちは、僕をよっぽど英語の達人だと買いかぶっているらしく、いまにこの道場へアメリカの兵隊が来たら、或いは僕を通訳としてひっぱり出すかも知れないんだ。その時の事を思うと、僕は心配で仕様がないんですよ。察してくれたまえ。」
「だって、あなたは本当に英語がよくお出来になるようじゃありませんか。」
「冗談じゃない。とてもそんな通訳なんて出来やしないよ。どうも僕は少し調子に乗って、助手たちに英語の披露をしすぎたんだ。これで通訳なんかにひっぱり出されて、僕がへどもどまごついているところを見られたら、あの助手たちが、どんなに僕を軽蔑するか、わかりゃしない。どうも、こんなに弱った事は無い。このごろ、それが心配で、夜もよく眠られぬくらいなんだ。御賢察にまかせるよ。」