太宰治 『斜陽』 「ミルクを沸したから、いらっしゃい」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『斜陽』

現代語化

「ミルク沸かしたから、来て」
「寒いから、すごく熱くしてみたよ」
「あの人と、私って、そもそも何も合わないでしょ?」
「合わない」
「私、こんなにわがままだし、それに芸術家って嫌いじゃないし、おまけにあの人って収入もたくさんあるみたいだし、あんな人と結婚したら、いいと思うわ。でも、ダメなの」
「かず子って、いけない子ね。そんなに、「ダメ」なのに、こないだあの人と、ゆっくりあれこれ楽しそうに話してたでしょう。あなたの気持ちが、わからない」
「あら、だって、面白かったんだもん。もっと、色々話してみたかったわ。私って、行儀が悪いわね」
「違うよ、べったりしてるのよ。かず子べったり」
「アップってさ、髪の毛が少ない人がすると良いのよ。あなたのアップは立派すぎて、金の小さな冠でも乗せたいくらい。失敗ね」
「かず子、がっかり。だって、お母さんいつだったか、「かず子は首筋が白くて綺麗だから、なるべく首筋を隠さないようにね」って言ったじゃない」
「そういうことだけは、覚えてるわね」
「少しでもいいこと言われたら、一生忘れない。覚えてたほうが、楽しいもん」
「こないだ、あの人からも、いろいろ褒められたんでしょ?」
「そうよ。それで、べったりになっちゃったの。私と一緒にいるとインスピレーションが、ああ、たまらないって。私、芸術家は嫌いじゃないけど、あんな、偉そうにしてる人って、すごく、「ダメ」なの」
「直治の先生って、どんな人なの?」
「よくわからないけど、直治の先生さんだし、札つきの不良らしいわ」
「札つき?」
「面白い言葉ね。札つきなら、かえって安心でいいじゃない。首に鈴下げ てる子猫みたいで可愛いわ。札のついていない不良が、怖いんです」
「そうかしら」

原文 (会話文抽出)

「ミルクを沸したから、いらっしゃい」
「寒いから、うんと熱くしてみたの」
「あの方と、私とは、どだい何も似合いませんでしょう?」
「似合わない」
「私、こんなにわがままだし、それに芸術家というものをきらいじゃないし、おまけに、あの方にはたくさんの収入があるらしいし、あんな方と結婚したら、そりゃいいと思うわ。だけど、ダメなの」
「かず子は、いけない子ね。そんなに、ダメでいながら、こないだあの方と、ゆっくり何かとたのしそうにお話をしていたでしょう。あなたの気持が、わからない」
「あら、だって、面白かったんですもの。もっと、いろいろ話をしてみたかったわ。私、たしなみが無いのね」
「いいえ、べったりしているのよ。かず子べったり」
「アップはね、髪の毛の少いひとがするといいのよ。あなたのアップは立派すぎて、金の小さい冠でも載せてみたいくらい。失敗ね」
「かず子がっかり。だって、お母さまはいつだったか、かず子は頸すじが白くて綺麗だから、なるべく頸すじを隠さないように、っておっしゃったじゃないの」
「そんな事だけは、覚えているのね」
「少しでもほめられた事は、一生わすれません。覚えていたほうが、たのしいもの」
「こないだ、あの方からも、何かとほめられたのでしょう」
「そうよ。それで、べったりになっちゃったの。私と一緒にいると霊感が、ああ、たまらない。私、芸術家はきらいじゃないんですけど、あんな、人格者みたいに、もったいぶってるひとは、とても、ダメなの」
「直治の師匠さんは、どんなひとなの?」
「よくわからないけど、どうせ直治の師匠さんですもの、札つきの不良らしいわ」
「札つき?」
「面白い言葉ね。札つきなら、かえって安全でいいじゃないの。鈴を首にさげている子猫みたいで可愛らしいくらい。札のついていない不良が、こわいんです」
「そうかしら」


青空文庫現代語化 Home リスト