太宰治 『朝』 「こりゃ、いけねえ。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『朝』

現代語化

「こりゃ、いけねえ。」
「キクちゃんの机の上に、クレヴの奥方という本があったね。」
「あの頃の貴婦人はね、宮殿のお庭や、また廊下の階段の下の暗いところなどで、平気で小便をしたものなんだ。窓から小便をするという事も、だから、本来は貴族的な事なんだ。」
「お酒飲むんだったら、ありますわ。貴族は、寝ながら飲むんでしょう?」
「いや、貴族は暗闇を嫌うものだ、元来が臆病なんだからね。暗いと、怖くてだめなんだ。蝋燭が無いかね。蝋燭をつけてくれたら、飲んでもいい。」
「どこへ置きましょう。」
「燭台は高きに置け、とバイブルにあるから、高いところがいい。その本箱の上はどうだろう。」
「お酒は? コップで?」
「深夜の酒は、コップに注げ、とバイブルにある。」
「まだ、もう1杯分くらい、ございますわ。」
「いや、これだけでいい。」
「さあ、もう一眠りだ。キクちゃんも、おやすみ。」

原文 (会話文抽出)

「こりゃ、いけねえ。」
「キクちゃんの机の上に、クレーヴの奥方という本があったね。」
「あの頃の貴婦人はね、宮殿のお庭や、また廊下の階段の下の暗いところなどで、平気で小便をしたものなんだ。窓から小便をするという事も、だから、本来は貴族的な事なんだ。」
「お酒お飲みになるんだったら、ありますわ。貴族は、寝ながら飲むんでしょう?」
「いや、貴族は暗黒をいとうものだ、元来が臆病なんだからね。暗いと、こわくて駄目なんだ。蝋燭が無いかね。蝋燭をつけてくれたら、飲んでもいい。」
「どこへ置きましょう。」
「燭台は高きに置け、とバイブルに在るから、高いところがいい。その本箱の上へどうだろう。」
「お酒は? コップで?」
「深夜の酒は、コップに注げ、とバイブルに在る。」
「まだ、もう一ぱいぶんくらい、ございますわ。」
「いや、これだけでいい。」
「さあ、もう一眠りだ。キクちゃんも、おやすみ。」


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