芥川龍之介 『素戔嗚尊』 「その高志の大蛇と云うのは、一体どんな怪物…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『素戔嗚尊』

現代語化

「その高志の大蛇っていうのは、一体どんな怪物なんですか」
「人の噂を聞きますと、頭と尾が8つあって、8つの谷にもまたがるくらい、大きな蛇だとか申すことです」
「そうですか。それはいいことを聞きました。そんな怪物には何年にも、出会ったことがありませんから、話を聞いたばかりでも、力瘤が動くような気がします」
「こう申す中でもいつ何時、大蛇が参るかわかりませんが、あなたは――」
「大蛇を退治するつもりです」
「退治すると言っていただいても、大蛇はさっき申し上げた通り、一方ならない神でございますから――」
「そうです」
「万一あなたがそのために、お怪我をなさらないとも限りませんし、――」
「そうです」
「どうせ私は犠牲になるものと、覚悟を決めたつもりでございます。たといこのまま、――」
「お待ちください」
「私はあなたをおめおめと大蛇の犠牲にしたくありません」
「それでも大蛇が強ければ――」
「仕方がないと諦めるのですか。たとい仕方がないにしても、私はやっぱり戦うのです」
「私が大蛇の犠牲になるのは、神々の思し召しでございます」
「そうかもしれません。しかし犠牲になると言うことがなかったら、あなたは今頃たった1人、こんなところに来てはいないでしょう。すると神々の思し召しは、あなたを大蛇の犠牲にするより、むしろ私に大蛇の命を断たせようと言うのかもしれません」

原文 (会話文抽出)

「その高志の大蛇と云うのは、一体どんな怪物なのです。」
「人の噂を聞きますと、頭と尾とが八つある、八つの谷にも亘るくらい、大きな蛇だとか申す事でございます。」
「そうですか。それは好い事を聞きました。そんな怪物には何年にも、出合った事がありませんから、話を聞いたばかりでも、力瘤の動くような気がします。」
「こう申す内にもいつ何時、大蛇が参るかわかりませんが、あなたは――」
「大蛇を退治する心算です。」
「退治すると仰有っても、大蛇は只今申し上げた通り、一方ならない神でございますから――」
「そうです。」
「万一あなたがそのために、御怪我をなさらないとも限りませんし、――」
「そうです。」
「どうせ私は犠になるものと、覚悟をきめた体でございます。たといこのまま、――」
「御待ちなさい。」
「私はあなたをおめおめと大蛇の犠にはしたくないのです。」
「それでも大蛇が強ければ――」
「仕方がないと云うのですか。たとい仕方がないにしても、私はやはり戦うのです。」
「私が大蛇の犠になるのは、神々の思召しでございます。」
「そうかも知れません。しかし犠になると云う事がなかったら、あなたは今時分たった一人、こんな所に来てはいないでしょう。して見ると神々の思召しは、あなたを大蛇の犠にするより、反って私に大蛇の命を断たせようと云うのかも知れません。」


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