GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』
現代語化
「そうでしたよ。ちょうど、僕は京都の方でしたよ。あの手紙は伊勢久の店の者に頼んで、飛脚で出したような気がします。」
「まあ、聞いてください。馬籠のお師匠さんも何かあったのか、荒町の方から来てるんですよ。会って聞いてみたら、これから中津川へ京都の方の様子を聞きに行く途中だって言うんです。それじゃあちょうどいい、お師匠さんも中津川まで行かなくて済むし、俺たちも馬籠まで行かなくて済む、峠の上で話そうじゃないかってなって、それで3人でいろいろ話したのが、この茶屋だったんです。」
「あれからもう20年になりますよね。」
原文 (会話文抽出)
「そう言えば、浅見さん、わたしどもが明治維新の成り立ったことを知ったのは、馬籠のお師匠さまより一日ほど早かったんです。今になってわたしもいろいろなことを考えますが、あの時分はまだ子供でした。一晩寝て、目がさめて見たら、もう王政復古が来ていた――そんなことを言って、あの蜂谷さん(故香蔵のこと)には笑われるくらいの子供でした。蜂谷さんはあんたからの手紙を受け取って、まだ馬籠じゃこんな復古の来たことも知らずにいるんじゃないか、この手紙は早く半蔵さんにも読ませたいと言って、その途中にわたしをも誘ってくだすったんです。忘れもしません、あれは慶応二年の十二月でした。街道は雪でまッ白でした。わたしは蜂谷さんと二人でさくさく音のする雪を踏んで、この峠を登って来たものでした。」
「そうでしたよ。ちょうど、わたしは京都の方でしたよ。あの手紙は伊勢久の店のものに頼んで、飛脚で出したように覚えています。」
「まあ、聞いてください。馬籠のお師匠さまも虫が知らせたと見えて、荒町の方からやっておいでなさる。行きあって尋ねて見ますと、これから中津川へ京都の方の様子をききに行くつもりで家を出て来たところだとおっしゃる。そんならちょうどいい、お師匠さまも中津川まで行かずに済むし、わたしどもも馬籠まで行かずに済む、峠の上で話そうじゃないかということになりまして、それから三人で大いに話したのも、この茶屋でした。」
「あれから足掛け二十年の月日がたちますものね。」