島崎藤村 『夜明け前』 「たなびら」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「たなびら」
「奥さんがいるんですが、」
「あの時、あなたの家の土蔵に隠れてた時、青山さんが瓢箪に酒を入れて持ってきて、私に飲ませてくれました。あの時の酒の味がよほど身にしみたみたいで、伊那の方でも思い出しましたし、京都や東京に行ってる時も思い出しました。たぶん、私は一生あの酒の味を忘れないでしょう。」
「あれから、十年も経ちますものね。」
「蕨です。」
「今の時期に蕨って珍しいですね。」
「これは春先の若い蕨を塩漬けにしておいたもので、塩を抜いて、薄味で煮てみました。お酒がお好きな方には、合うかもしれません。一つ食べてみてください。」
「奥さん、この前も私は中津川の連中と一緒に一度お訪ねしましたが、でもあなたの家の人たちにじっくりお目にかかるのは、今回が初めてです。いい娘さんもおありんですね。」

原文 (会話文抽出)

「たなびら」
「奥さんの前ですが、」
「いつぞや、お宅の土蔵のなかに隠していただいた時、青山君が瓢箪に酒を入れて持って来て、わたしに飲ませてくれました。あの時の酒の味はよほど身にしみたと見えて、伊那の方でも思い出し、京都や東京の方に行ってる時も思い出しました。おそらく、わたしは一生あの酒の味を忘れますまい。」
「あれから、十年にもなりますものね。」
「蕨でございますよ。」
「今時分、蕨とはめずらしい。」
「これは春先の若い蕨を塩漬けにして置いたものですが、塩をもどして、薄味で煮て見ました。御酒の好きな方には、お口に合うかもしれません。一つ召し上がって見てください。」
「奥さん、この前もわたしは中津川の連中と一緒に一度お訪ねしましたが、しかしお宅の皆さんにしみじみお目にかかるのは、今度初めてです。よいお嬢さんもおありなさる。」


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