GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』
現代語化
「へー、次郎、尾州かよ。」
「うん、その尾州ってのがさ――ホント、子供ってヤツは面白いよな。ところがさぁ、誰かが会津にならねえんだよ。」
「会津にならねえ?」
「そら、子供だろ。次郎が蓬莱屋のガキに『桃やん、お前会津やれよ』って言っても、あいつ黙っててさ、会津になんかなろうとしねえんだって。桃やん、お前やるならいいもんだ貸してやるよ、うちのおやじさんが買った大事の木刀を、きょうも――あしたも――しあさっても貸してやるって次郎が言ったら、蓬莱屋のガキはすげー借りたかったみたいで『うん、じゃぁ俺、会津やるわ』って、結局なったらしいよ。会津になったら殺されちゃうんだってさ。」
「やめろって、そんな話。俺、オーバーな話はキライじゃねえか。」
原文 (会話文抽出)
「でも、妙なものですね。ちょうどおとなのやるようなことを子供がやりますよ。梅屋の子供が長州、桝田屋の子供が薩摩、それから出店(桝田屋分家)の子供が土佐とかで、みんな戦ごっこです。わたしが吾家の次郎に、お前は何になるんだいと聞いて見ましたら、あの子の言うことがいい。おれは尾州ですとさ。」
「へえ、次郎のやつは尾州かい。」
「えゝ、その尾州――ほんとに、子供はおかしなものですね。ところが、あなた、だれも会津になり手がない。」
「会津になり手がない」
「そこは子供じゃありませんか。次郎が蓬莱屋の子に、桃さ、お前は会津におなりと言っても、あの蓬莱屋の子は黙っていて、どうしても会津になろうとは言い出さない。桃さ、お前がなるなら、よい物を貸す、吾家のお父さんに買ってもらった大事な木の太刀を貸す、きょうも――あしたも――ずっと明後日もあれを貸す、そう次郎が言いましたら、蓬莱屋の子はよっぽど借りたかったと見えて、うん、そんならおれは会津だ、としまいに言い出したそうです。会津になるものは討たれるんだそうですからね。」
「よせ、そんな話は。おれは大げさなことはきらいだ。」