島崎藤村 『夜明け前』 「あなた、正己も大きくなりましたろうね。あ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「あなた、正己も大きくなりましたよね。あれも今年で8歳になるんですよ」
「いや、大きくなったも何も。もうすっかり妻籠の子になりきったような顔してるよ。私が呼んだら、男の子らしい軽装で、お辞儀に出てきたよ。でも、照れくさそうな顔して、広い屋敷の中をウロウロしてたけど」
「ところで、半蔵、お通りまであと12、3日しかないよね。人足は足りる?」
「今回は旧天領の人たちが進んで助郷を務めることになりました。これは天領に限らないと言って、総督の執事は、村々の百姓にも人足として働くように勧めています。たぶん、今度の御通行を機に、助郷の制度も今までとは変わるでしょう」
「あなたは、それだから駄目なんだよ」
「人足のことなんかは半蔵に任せておけばいいのよ。もう隠居だなんて言いながら、あなたみたいに心配するから駄目なのよ」
「どうも、この頃はあなたにしかられるばかりです」

原文 (会話文抽出)

「あなた、正己も大きくなりましたろうね。あれもことしは八つになりますよ。」
「いや、大きくなったにも、なんにも。もうすっかり妻籠の子になりすましたような顔つきさ。おれが呼んだら、男の子らしい軽袗などをはいて、お辞儀に出て来たよ。でも、きまりが悪いような顔つきをして、広い屋敷のなかをまごまごしていたっけ。」
「時に、半蔵、御通行はあと十二、三日ぐらいしかあるまい。人足は足りるかい。」
「今度は旧天領のものが奮って助郷を勤めることになりました。これは天領にかぎらないからと言って、総督の執事は、村々の小前のものにまで人足の勤め方を奨励しています。おそらく、今度の御通行を一期にして、助郷のことも以前とは変わりましょう。」
「あなたは、それだからいけない。」
「人足のことなぞは半蔵に任せてお置きなさるがいい。おれはもう隠居だなんて言いながら、そうあなたのように気をもむからいけない。」
「どうも、この節はおまんのやつにしかられてばかりいる。」


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