島崎藤村 『夜明け前』 「偽役のかたとはさらに存ぜず、献金なぞいた…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「偽役の人なんて知りません。献金もしてないっす」
「待て」
「お前もよく聞け。最近、あちこちで変なこと言う奴が出てきて、腹立つよな。悪いことは全部徳川のせいにして。そういう時代になってきた。あの相良惣三一味の江戸での行動を考えてみろよ。天にも目がってんだぞ。おまけに、この街道まで来て、追分付近で暴れたんじゃねえか。官軍って言いさえすれば、何をやってもいいってもんじゃねえだろう」
「そうだ」
「お前よく言ったな。俺も言おうと思ってたんだ」
「ま、ま」
「この場で言うのもなんだけど、この討伐の制札って、納得いかねえんだよな。今になって、俺はそう思う。もし孝明天皇陛下がお元気だったらずっと前なら、慶喜公に対しても、会津や桑名に対しても、こんな処罰はされなかっただろうに……」

原文 (会話文抽出)

「偽役のかたとはさらに存ぜず、献金なぞいたしましたことは恐れ入ります。」
「待て、」
「その方もよく承れ。近ごろはいろいろな異説を立てるものがあらわれて来て、実に心外な御時世ではある。なんでも悪い事は皆徳川の方へ持って行く。そういう時になって来た。まあ、あの相良惣三一味のものが江戸の方でしたことを考えて見るがいい。天道にも目はあるぞ。おまけに、この街道筋まで来て、追分辺で働いた狼藉はどうだ。官軍をとなえさえすれば、何をしてもいいというものではあるまい。」
「さようだ。」
「貴殿はよく言った。実は、拙者もそれを言おうと思っていたところでござる。」
「いや、」
「御同役の前でござるが、あの御征討の制札にしてからが、自分には腑に落ちない。今になって、拙者はつくづくそう思う。もし先帝が御在世であらせられたら、慶喜公に対しても、会津や桑名に対しても、こんな御処置はあらせられまいに……」


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