島崎藤村 『夜明け前』 「お民、このお神酒は家じゅうでいただこうぜ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「お民、このお神酒はみんなに分けようぜ。お菓子も全部な。」
「お父さんもきっと喜ぶよ。」
「俺もこれいただいて、今日はぐっすり眠りたいよ。いろいろ考えると眠れなくなってくるよ。俺の耳には、どんなにうるさい音が聞こえてくるか知らないよ。」
「あなたは眠れないって、よくありますよね。」
「見てみろ、景蔵さんもまたすぐ京都に行くらしいぞ。あの人もじっとしてられなくなったみたいだ。」
「あなた――あなたは家のものと一緒にいてくださいよ。お父さんのそばにいてくださいよ。お父さんも、いつ何があるかわかりませんよ。」
「それは言われなくてもわかってるよ。まあ、条山神社のお神酒いただいて、今日はぐっすり眠ることにしよう。こういう時代になると、地方なんて全然見向きもされなくなる。俺みたいな縁の下の力持ち――そう、俺は自分のことを縁の下の力持ちだと思ってるんだが、どうだい。宿場の苦労なんかは、お前、言っても無駄なことだよ。」

原文 (会話文抽出)

「お民、このお神酒は家じゅうでいただこうぜ。お菓子もみんなに分けようぜ。」
「きっと、お父さんが喜びますよ。」
「おれもこれをいただいて、今夜はよく眠りたい。いろいろなことを考えるとおれは眠られなくなって来るよ。このおれの耳には、どれほどの騒がしい音が聞こえて来るかしれない。」
「あなたには眠られないということが、よくあるんですね。」
「ごらんな、景蔵さんもまた近いうちに京都へ出かけるそうだ。あの人もぐずぐずしちゃいられなくなったと見える。」
「あなた――あなたは家のものと一緒にいてくださいよ。お父さんのそばにいてくださいよ。あのお父さんも、いつどんなことがあるかしれませんよ。」
「そりゃお前に言われるまでもないサ。まあ、条山神社のお神酒でもいただいて、今夜はよく眠ることだ。こういう時世になって来ると、地方なぞはてんで顧みられない。おれのような縁の下の力持ち――そうだ、おれは自分のことを縁の下の力持ちだと思うが、どうだい。宿場の骨折りなぞはお前、説いても詮のないことだ。」


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