GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』
現代語化
「中津川あたりでは、太田陣屋に呼び出されて、尾州藩から閉門を命じられた商人だっていう話があります。罰金ですよ。もうけすぎたから」
「万屋さんはどうしたんでしょう」
「万屋さんですか」
「あの人はやらないことはしない。横浜の商売で生糸の相場が下がると見たら、さっさと見切りをつけて、今度は京都を狙ってるんです。今じゃ上方へ生糸をどんどん送ってるでしょう」
「美濃の商人はすごいですね。中津川あたりには勇敢な人がいますよね」
「宮川先生と言えば」
「ぼくが喜多村瑞見さんに連れてってもらった時、一度神奈川の牡丹屋にお邪魔したことがあります。青山さんはご存じないでしょうけど、この喜多村先生も変わってますよ。前は幕府の奥詰のお医者さんだったけど、開港当時の函館に行って長いこと勤めてたら、士分に引き立てられて、すぐに函館奉行の組頭になったんです。今は江戸に戻って、昌平校の頭取から目付(監察)に出世しました。外交の仕事をしていますが、このまま行くと外国奉行になるでしょうね。僕は旅籠屋ですが、あんなに出世した人は珍しいです」
「徳川幕府にも人材はいるもんなんですね」
原文 (会話文抽出)
「横浜貿易と言えば、あれにはずいぶん祟られた人がある。」
「中津川あたりには太田の陣屋へ呼び出されて、尾州藩から閉門を仰せ付けられた商人もあるなんて、そんな話じゃありませんか。お灸だ。もうけ過ぎるからでさ。」
「万屋さんもどうなすったでしょう。」
「万屋さんですか。」
「あの人はぐずぐずしてやしません。横浜の商売も生糸の相場が下がると見ると、すぐに見切りをつけて、今度は京都の方へ目をつけています。今じゃ上方へどんどん生糸の荷を送っているでしょうよ。」
「どうも美濃の商人にあっちゃ、かなわない。中津川あたりにはなかなか勇敢な人がいますね。」
「宮川先生で思い出しました。」
「手前が喜多村瑞見というかたのお供をして、一度神奈川の牡丹屋にお訪ねしたことがございました。青山さんは御存じないかもしれませんが、この喜多村先生がまた変わり物と来てる。元は幕府の奥詰のお医者様ですが、開港当時の函館の方へ行って長いこと勤めていらっしゃるうちに、士分に取り立てられて、間もなく函館奉行の組頭でさ。今じゃ江戸へお帰りになって、昌平校の頭取から御目付(監察)に出世なすった。外交掛りを勤めておいでですが、あの調子で行きますと今に外国奉行でしょう。手前もこんな旅籠屋渡世をして見ていますが、あんなに出世をなすったかたもめずらしゅうございます。」
「徳川幕府に人がないでもありませんかね。」