島崎藤村 『夜明け前』 「半蔵さん、何かあったんですか。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「半蔵さん、何かあったんですか」
「いや、別に」
「問屋場で誰かが暴れたんですか」
「人足の出し方が遅いって言うんですよ。聞き分けのない武家ばっかりで、問屋泣かせです」
「最近なんでも力ずくで行こうとする。力で勝とうとする世の中になってきた」
「寿平次さん、うちにいる勝重が何て言うかと思ったら、「徳川も終わりですね」だって。それを聞いた時はびっくりしました。あんな少年がですよ」
「どうだ、正己」
「叔父さんと一緒に妻籠に行かないか」
「行く」
「行くのはいいけど」
「どれ、叔父さんが入れてみよう」
「叔父さん、僕も」
「いいよ。重いな」
「お粂はいい娘になりそうですね」
「祖母さんの教育がちゃんとしてるから、何か違いますよね。君たち夫婦はこんな娘がいるから幸せです。僕は家庭に恵まれてない」
「みんな、祖母さんのところへ行きなさい。台所で蕎麦を打ってるから、見に行きなさい」

原文 (会話文抽出)

「半蔵さん、何かあったんですか。」
「なに、なんでもないんですよ。」
「だれか問屋場であばれでもしたんですか。」
「いえ、人足の出し方がおそいと言うんでしょう。聞き分けのない武家衆と来たら、問屋泣かせです。」
「この節はなんでも力ずくで行こうとする。力で勝とうとするような世の中になって来た。」
「寿平次さん、吾家にいる勝重さんが何を言い出すかと思ったら、徳川の代も末になりましたね、ですとさ。それを聞いた時は、わたしもギョッとしましたね。ほんとに――あんな少年がですよ。」
「どうだ、正己。」
「叔父さんと一緒に、妻籠へ行くかい。」
「行く。」
「行くはよかった。」
「どれ、叔父さんが一つ抱いて見てやろうか。」
「叔父さん、わたしも。」
「よ。これは重い。」
「お粂はよい娘になりそうですね。」
「祖母さんのお仕込みと見えて、どこか違う。君たち夫婦はこんな娘があるからいいさ。わたしは実に家庭には恵まれない。」
「みんな、祖母さんの方へ行ってごらん。台所で蕎麦を打ってるから、見に行ってごらん。」


青空文庫現代語化 Home リスト