島崎藤村 『夜明け前』 「やれ、やれ、戦争も始まらずに済むか。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「はー、戦争にならなくてよかったよ」
「でも、お父さん、これが京都に知れたら大変ですよ。なんでこんな償金払ったんかって、そういう声が出るでしょ」
「お父さん、羽織の襟が曲がってますよ。こんな日は髪結いさんでも呼んでサッパリしたほうがいいのに」
「いいよ」
「さっき三浦屋の人が来て、江戸の浄瑠璃語り一家が泊まってるから本陣の旦那にも来てくださいって言ってました。旅の芸人じゃないらしいですよ、聞いてみてくれって。今夜は太平記やるんだって」
「いや、いいや」
「今日はどうしたんですか?」
「なんか落ち着かないんだ。囲炉裏に来たけど、座ったまま」

原文 (会話文抽出)

「やれ、やれ、戦争も始まらずに済むか。」
「しかし、お父さん、これが京都へ知れたらどういうことになりましょう。なぜ、そんな償金を払ったかなんて、そういう声が必ず起こって来ましょうよ。」
「あなた、羽織の襟が折れていませんよ。こんな日には、髪結いでも呼んで、さっぱりとなすったら。」
「まあいい。」
「さっき、三浦屋の使いが来て、江戸のじょうるり語りが家内六人連れで泊まっていますから、本陣の旦那にもお出かけくださいッて、そう言って行きましたよ。旅の芸人のようじゃない、まあきいてごらんなさればわかる、今夜は太平記ですなんて、そんなことをしきりと言っていましたよ。」
「まあ、おれはいい。」
「きょうはどうなすったか。」
「どうも心が動いてしかたがない。囲炉裏ばたへ来て、今すわって見たところだ。」


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