島崎藤村 『夜明け前』 「勝重さん、君もそう長くわたしのそばにはい…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 島崎藤村 『夜明け前』

現代語化

「勝重くんもずっと僕と一緒にいられるわけじゃないよね。来年くらいには落合に帰らなきゃいけないだろうし。きっとお見合いとかあるんでしょ」
「もっと勉強したいと思ってます。そういう話もありましたけど、まだ早いって断わりました」
「青山さん」
「これは馬籠へのお土産にしてください」
「それから一つお願いがあります。あの御神前にお供えした歌、拝見しました。こんな田舎でまともな短冊もありませんが、何か僕ん家にも記念に残していただきたいんです」
「青山さん、これは八つの子です。遅生まれの八つですが、字を書くのが好きなやつです。山奥なのでいい先生もいません。これが縁になって、また王滝にも遊びに来てください。そしてこの子に勉強でも教えてやって」
「福島からここまでは5里と言われてますが、実際は4里半しかありませんよね。青山さんって福島に出張に行くことが多いですよね。あの行人橋から御嶽山道を通って常磐の渡しまで歩けば、来る時と同じ道に出るんです。今度はぜひ福島の方から回ってきて下さい」
「はーい。王滝気に入りました。木曾にこんな仙郷があるなんて。またタイミングを見てお邪魔します。僕も仕事が忙しいですし、世の中もわかってますから、次に来られるのはいつになるかわかんないけど。でも、王滝川の音を聞きながら帰りますね」

原文 (会話文抽出)

「勝重さん、君もそう長くわたしのそばにはいられまいね。来年あたりは落合の方へ帰らにゃなるまいね。きっと家の方では、君の縁談が待っていましょう。」
「わたしはもっと勉強したいと思います。そんな話がありましたけれど、まだ早いからと言って断わりました。」
「青山さん」
「これは馬籠へお持ち帰りを願います。」
「それから一つお願いがあります。あの御神前へおあげになった歌は、結構に拝見しました。こんな辺鄙なところで、ろくな短冊もありませんが、何かわたしの家へも記念に残して置いていただきたい。」
「青山さん、これは八つになります。おそ生まれの八つですが、手習いなぞの好きな子です。ごらんのとおりな山の中で、よいお師匠さまも見当たらないでいます。どうかこれを御縁故に、ちょくちょく王滝へもお出かけを願いたい。この子にも、本でも教えてやっていただきたい。」
「福島からここまでは五里と申しておりますが、正味四里半しかありません。青山さんは福島へはよく御出張でしょう。あの行人橋から御嶽山道について常磐の渡しまでお歩きになれば、今度お越しになったと同じ道に落ち合います。この次ぎはぜひ、福島の方からお回りください。」
「えゝ。王滝は気に入りました。こんな仙郷が木曾にあるかと思うようです。またおりを見てお邪魔にあがりますよ。わたしもこれでいそがしいからだですし、御承知の世の中ですから、この次ぎやって来られるのはいつのことですか。まあ、王滝川の音をよく聞いて行くんですね。」


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